もはや次元の違う世界。数字に見る岩隈久志のすごさ

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 WHIPの計算方式を見ても分かるとおり、低い数値を残すためには、いかにフォアボールを出さないかが重要となります。岩隈投手が9イニングで与えたフォアボールの平均数は、メジャートップの0.78個。149イニング3分の1を投げて、わずか13個しかフォアボールを出していないのです。昨シーズン、岩隈投手が残した与四球率はア・リーグ3位の1.72個。これも十分にすごい数字なのですが、今シーズンはまた一段とコントロールに磨きがかかったと思います。

 平均的な投手が与えるフォアボールの数は9イニングあたり約3個で、2個以下は優秀と言われています。ましてや1個以下というのは、信じられない数字です。今シーズン、平均1個未満を記録しているのは、岩隈投手とミネソタ・ツインズのフィル・ヒューズ(0.82個)のふたりだけ。このままの数値をキープできれば、1998年にジェイミー・モイヤーという左投手がマークしたマリナーズの球団記録(1.61個)を塗り替えることになるでしょう。

 またアメリカでは、与四球と奪三振との比率もピッチャーを評価する基準として用いられます。今シーズンの岩隈投手は、1個のフォアボールに対して9.31奪三振(メジャー2位)。今シーズンはフォアボールを13個しか与えていないのに、すでに121個もの三振を奪っています。平均的なピッチャーは、1個のフォアボールに対して2~3個の三振を奪うぐらいの比率(2.00~3.00)です。岩隈投手の9.31奪三振との差は歴然で、すでに次元が違います。

 特に7月1日から24日まで、岩隈投手は「5先発試合・連続無四球」という球団新記録を樹立しました。この期間、35イニング3分の2連続無四球という記録も残しましたが、これは2010年7月にクリフ・リー(現フィラデルフィア・フィリーズ)がマークした38イニングに次ぐ球団史上2番目の記録なのです。

 フォアボールが少なければ、もちろん球数も少なくなります。今シーズンの岩隈投手は現在、メジャー2位の1イニング平均13.76球しか投げていません。メジャーの平均は1イニング15球と言われています。となると、6イニングを投げると90球、7イニングだと105球になる計算なので、そのあたりで投手を交代させるのが一般的でしょう。しかし、岩隈投手が100球まで投げるのなら、8回途中まで引っ張ることができるのです。

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