田中将大の右ヒジはなぜ壊れたのか?

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 田中はここまで18試合に登板し、中4日は8回、中5日が8回、中6日が1回。ちなみに、中4日で登板した試合の防御率は3.07。中5日が2.30、中6日が0.00と、登板期間が空くほど結果は良くなっている。常に中4日でフル稼働するような起用はなかったが、それでも田中のヒジに異変は起きてしまった。

 ESPN電子版は日本時代からのデータを取り出し、プロ入り後、25歳までに1444回1/3を投げた事実を取り上げ、「投げ過ぎ」と指摘した。だが、田中以上のイニングを投げたマリナーズのフェリックス・フェルナンデス(1694回2/3)、ジャイアンツのマット・ケイン(1493回1/3)、レンジャーズのダルビッシュ有(1459回2/3)の3投手は、これまで長期離脱は一度もない。

 また、日本人投手にとっては、メジャーの硬いマウンド、日本より重くて大きく感じる上に滑りやすいメジャー公式球、中4日での登板間隔がヒジに負担をかけているという声は多い。さらに、田中の場合は結果を出そうとし過ぎて、4月の時点でスプリットを多投し過ぎたのではないかという意見もある。だが、どの意見も遠からず、近からず。おそらく、複合的な要素が重なり合ったに違いない。

 田中は現地時間7月14日からニューヨークでリハビリに入る。まずは、PRP(Platelet-Rich Plasma)療法と呼ばれる靱帯の組織を再生させる注射を打つことで患部の回復を図る。早期復帰はヤンキースだけでなく、田中自身も強く望んでいるだろうが、長いこれからの野球人生を考えれば、早期復帰だけが求める道でもない。野球選手に「完治」という言葉などないのかもしれないが、今は完治を目指し、ゆっくり、そしてしっかり治してほしいと切に願う。

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