田中最大のライバル。全米を驚かせたもうひとりの新人 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 次に取り上げたいバッターは、マイアミ・マーリンズでプレイしているケーシー・マギーです。昨年、田中投手とともに楽天の日本一に貢献した選手なので、覚えている人も多いのではないでしょうか。そんな彼が2年ぶりにメジャーに復帰したのですが、まさかこれだけ活躍するとは思いませんでした。現在、打率.322はナ・リーグ4位。また、リーグトップとなる110安打を放っており、復帰1年目でのシーズン200安打達成も夢ではありません。

 さらに、マギーの成績で注目すべき点は得点圏打率でしょう。メジャートップの.391を記録しており、マーリンズの得点源となっています。3番のジャンカルロ・スタントンを後方から援護すべく、開幕直後からマーリンズの4番に定着。スタントンが敬遠されたあとの成績は10打数4安打・6打点とチャンスに滅法強く、5月5日のニューヨーク・メッツ戦でサヨナラヒット、6月15日のピッツバーグ・パイレーツ戦でもサヨナラ犠牲フライと、何度もチームに勝利をもたらしています。

 また、守備でもメジャー全三塁手の中で2位となる守備率.982をマークするなど、マギーは攻守両面で貢献しています。エースのホセ・フェルナンデスを故障で欠いているマーリンズがナ・リーグ東地区の3位に食い込んでいるのは、マギーの活躍のおかげでしょう。日本からの帰国1年目でこれだけブレイクしたのは、1990年に51本塁打・132打点で二冠に輝いたセシル・フィルダー(当時デトロイト・タイガース)以来ではないでしょうか。マギーの活躍ぶりは、それぐらいの衝撃だと思います。

 シーズン前半戦を沸かせたバッターで、もうひとり特筆すべき選手は、シカゴ・ホワイトソックスに所属するホセ・アブレイユでしょう。以前のコラムでも少し紹介しましたが、昨年キューバから亡命し、6年総額6400万ドル(約66億8000万円)でホワイトソックスと契約したアブレイユは、開幕直後に球団史上初となる「デビュー10試合で2度の1試合2本塁打」をマークし、華々しくメジャー人生をスタートさせました。しかも、アブレイユはペースを緩めることなく、さらにホームランを量産しているのです。現在、76試合に出場して打率.275・27本塁打(ア・リーグ2位)・69打点(同3位)。メジャーデビューから67試合での25本塁打到達は、1937年のルディ・ヨーク(デトロイト・タイガースなど)が残した72試合を更新するメジャー史上最速の記録です。

 加えて、アブレイユはデビュー67試合でマルチホームラン(1試合2本塁打以上)を4度も記録。これは、1978年のボブ・ホーナー(当時アトランタ・ブレーブス)の記録に並ぶ金字塔です。さらに注目すべきは、すでに4人のサイ・ヤング賞投手からホームランを打っている点でしょう。トロント・ブルージェイズのR.A.ディッキー(2012年受賞)、ロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショウ(2011年・2013年)、タンパベイ・レイズのデビッド・プライス(2012年)、そしてデトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダー(2011年)からホームランを記録しています。ルーキーながら、エースキラーとしての風格十分。このままのペースで本塁打を量産すれば、シーズン50本塁打も十分あり得ます。そうなれば、ア・リーグの新人王争いはどうなることでしょう。田中投手にとって最大の脅威となりそうなアブレイユの活躍から目が離せません。

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