ダルビッシュのカーブに全米騒然。最古の変化球の魅力

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 1974年のカリフォルニア(現ロサンゼルス)・エンゼルス時代に人類で初めて時速100マイル(約161キロ)の壁を打ち破るなど、ライアンはメジャー史上最高の速球投手と言われています。しかし、速球の合間にカーブを織り交ぜたことによって、これらの大記録が成し遂げられたという側面も忘れてはいけないと思います。

 そして、3人目の「カーブの使い手」として紹介したいのは、バート・ブライレブン(1970年~1992年/ミネソタ・ツインズなど)です。オランダ出身のブライレブンは1970年に19歳でデビューを果たし、メジャー22年間で通算287勝、外国人投手として歴代1位の勝利数を挙げた殿堂入り右腕です。

 通算3701奪三振は、メジャー歴代5位となる大記録。奪三振率はコーファックス(9.28/歴代4位)やライアン(9.55/歴代3位)に及びませんが、22年間投げて1試合平均6.70奪三振(歴代43位)は立派な数字です。1985年には最多奪三振(206個)のタイトルも手にしました。ただ、コーファックスやライアンとタイプが違ったのは、ブライレブンは決してストレートが速くなかった点です。

 度々、アメリカでは「史上最高のカーブボーラーは?」という話題になりますが、多くのメジャー関係者はブライレブンの名前を挙げています。1951年にオランダで生まれた彼ですが、育ったのはカリフォルニア。つまり、1960年代前半にロサンゼルスで大旋風を巻き起こしたコーファックスのピッチングを見て育ったのです。

 コーファックスを真似て練習を重ねたブライレブンのカーブは、常識を超えた曲がり方をします。ブライレブンの右腕から放たれたボールは、相手が右バッターなら身体めがけて飛んでいき、それから信じられない軌道で内角から外角へと曲がっていくのです。バッターとしては、さぞかし恐怖だったことでしょう。カーブの使い手は過去に大勢いましたが、その中でもブライレブンは突出していました。通算3701奪三振の多くは、ほとんど彼の最大の武器であるカーブで築き上げてきたものです。

 ちなみに、現役でカーブの名手といえば、間違いなくクレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース/2011年・2013年サイ・ヤング賞受賞)でしょう。6月18日のコロラド・ロッキーズ戦でもキレのあるカーブを駆使して、自身初のノーヒットノーランを達成しました。ストレートとカーブでゲームを組み立て、三振の山を重ねていくドジャースの若き左腕エースのカーショウは、まさに「コーファックスの再来」と言えます。

 もちろん、ダルビッシュ投手も現役屈指の「カーブの名手」のひとりだと思います。1試合のなかで多くは投げないのですが、時折投げるカーブは必見です。芸術的と評されるダルビッシュ投手のカーブを、ぜひとも注目してみてください。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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