13年前にグウィンが語った「イチローのバッティング」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Getty Images

―― 対戦投手のスカウティングレポートなどは参考にしますか。

「データはまったく見ません。私ほど長くやっていれば、誰がどんなピッチを持っていて、何を仕掛けてくるのか把握していますから。ビデオを見るだけです。自宅のビデオルームには約700人の投手の映像が揃っています。ビデオでは自分のスイングの確認や、捕手や審判がどこに立っているのかもチェックします」

―― スランプという言葉を知っていますか。

「もちろん(笑)。25打席以上ヒットがないとスランプと自覚します。スランプに陥った時の練習メニューもいくつか持っていて、ティーバッティングはそのひとつです。ティーをすることで『ボールを追いかけて打ってはいけない』というバッティングの鉄則を確認するんです」

―― 3割打者と3割5分の打者では見える世界が違うのでしょうか。

「3割5分の打者はランディ・ジョンソン(※1)やケビン・ブラウン(※2)などの最高の投手を前にしても自分の打撃ができる。3割打者は良い打者とは言えますが、トップレベル以下の投手を喰い物にしているにすぎません」
※1マリナーズやダイヤモンドバックなどで活躍。サイ・ヤング賞5回など、数々のタイトルを獲得した伝説的左腕。メジャー通算303勝
※2レンジャーズ、ドジャースなどで活躍し、メジャー通算211勝

―― グウィン選手にとって理想の打球とは?

「左中間へ飛んだ打球にかすかなフェードがかかり、センターが追いかけても、追いかけてもボールに追いつけない。そういう打球が好きです」

 2001年のメジャーリーグはパワーヒッター全盛時で、グウィンのようなコンタクトヒッターは絶滅種になりかけていた。

「パワーヒッターが3割5分を打つ時代ですからね。お金も彼らに集中します。すると、コンタクトヒッターもパワーをつけてホームランを狙いだす。ヒット狙いで出塁率が高く盗塁もして得点も多い。純粋なコンタクトヒッターは本当に少なくなりました」

―― あなたのあとに続くコンタクトヒッターは存在するのでしょうか。

「イチロー。この問題に関しては前から考えていました。今、メジャーを見渡して純粋なコンタクトヒッターといえるのはイチローだけです」

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