マネーボールはもう古い?低予算アスレチックスの新戦略 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by Getty Images

 近年の例で言うと、2011年12月、アスレチックスはアリゾナ・ダイヤモンドバックスとのトレードで、元オールスター投手のトレバー・ケーヒルを放出し、ダイヤモンドバックスのナンバー1プロスペクト(若手有望株)だったジャロッド・パーカーという右投手を獲得しました。さらに同月、今度はワシントン・ナショナルズともトレードを敢行し、2年連続15勝以上をマークしていたジオ・ゴンザレスを出して、当時24歳だったトム・ミローンという左腕を手に入れています。さらに2013年12月にも、同年の開幕投手を務めたブレット・アンダーソンをコロラド・ロッキーズに放出し、その見返りにドリュー・ポメランツという右投手を獲得。近年のアスレチックスは実績ある選手を他球団にトレードする一方で、次々と若手プレイヤーを手に入れていったのです。

 ダイヤモンドバックス時代のパーカーは、まだ1試合しか先発していないルーキーでした。しかし、移籍した2012年に13勝(8敗)、2013年も12勝(8敗)をマーク。瞬(またた)く間にアスレチックスのエースへと成長しました。また、パーカーと同じ年にアスレチックスにやってきたミローンも、ナショナルズでは5試合の先発でわずか1勝止まり。それが移籍した2012年に13勝(10敗)、さらに翌年も12勝(9敗)と、2年連続ふたケタ勝利を挙げたのです。そしてポメランツも、昨年のロッキーズ時代の成績は0勝4敗・防御率6.23と結果を残せていませんでした。しかし、今年は5勝3敗・防御率1.90という抜群の安定感で、先発ローテーションの一角を占める存在となっているのです。

 アスレチックスは主力を放出する代わりに他球団から若手有望株を獲得し、彼らを育てることで、優勝争いのできる戦力を築き上げる戦略をとっています。一見、リスクがあるように思えますが、近年のアスレチックスの結果を見れば文句は言えないでしょう。アスレチックスに移籍した若手の活躍ぶりは、どれも目を見張るものばかりです。

 また、ビリー・ビーンGMが「トレード」とともに推進している戦略が、「再生プロジェクト」です。近年で振り返るならば、バートロ・コローン、ブランドン・モス、スコット・カズミアーが良い例でしょう。

 2010年シーズンを浪人していたコローンは、2011年にニューヨーク・ヤンキースで復帰後、アスレチックスに移籍してきました。すると、当時38歳ながらメジャーで7年ぶりとなるふたケタ勝利(10勝9敗)を挙げ、さらに昨年はア・リーグ2位の18勝(6敗)、同2位の防御率2.65をマークして完全復活を遂げたのです。

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