苦況のイチロー。それでも「準備をしない僕は...僕ではない」 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 それでも、ジョー・ジラルディ監督はカルロス・ベルトラン、ジャコビー・エルズベリー、アルフォンソ・ソリアーノ、ブレッド・ガードナーの外野手4人の起用を最優先する。つまり、結果を残せばラインアップに名を連ねることができる昨シーズンまでの起用法とまるで違うのだ。

 おそらく、当面は4人の選手の休養日以外にイチローがスタメンで起用されることはないだろう。数々の金字塔を打ちたて、今季も結果を出すイチローに対し、敬意のない起用とも思えるが、そんな状況にもかかわらずイチローは一度も準備を怠ることはない。

「僕が毎日やっていくことに変わりはない。ゲームに対しての準備というのは何ら変わりない。とにかく、それを重ねていくだけ。それをどこかで切らしてしまえば、本当に切れてしまう可能性がある。そこは大事にしたい。それをしない僕は......僕ではないですから」

 間違いなくイチローは今、野球人生で最も過酷な環境に身を置いている。とはいえ、イチローの戦う姿勢、プライドはまったく変わっていない。それは、出場試合数のプロ野球新記録を達成した時の言葉にも表れている。

「人がどう思うかは勝手ですけど、僕の中に(記録達成の意味は)ありません」

 乗り越えることのできない試練は、与えられることはないと言われている。今、イチローに突きつけられた現実はあまりにも厳しいが、イチローならばきっと乗り越えてくれるに違いない。それがイチローという天才打者に与えられた試練なのであろう。

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