松坂大輔「野球を辞める覚悟はできている。でも、今じゃない」 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 思えば2月中旬、松坂はボストンから車でフロリダ入りしていた。しかしそのドライブが、たまたまヤンキースの田中将大が日本からボーイング787をチャーターして渡米した、まさにそのタイミングだったことで、日米のメディアから“ひっそり”という表現で伝えられてしまった。

 しかし、松坂のドライブには理由があった。

 真冬のボストンから、ニューヨーク、フィラデルフィア、ボルチモア、ワシントンを越え、リッチモンドを過ぎると、季節は春になる。ノースカロライナ、サウスカロライナ、ジョージアと南へ下るほどに暖かくなり、フロリダへ入れば気分は夏だ。

 冬から春へ、そして夏……松坂は、そんな季節のうつろいを体感したかったのだ。

 まさかのラスベガス行きで、松坂にまだ春は来ない。しかし今のフォームで投げ続ける限り、春も夏も決して遠くはないはずだ。そのためにも辛抱強く、好調を維持する必要がある。フィジカルはもちろん、メンタル面でもモチベーションを維持しなければならない。それが何よりも難しいことは百も承知の上で、ここでひと踏ん張りできなければ、松坂がメジャーで投げるチャンスは潰えてしまうかもしれないのだ。松坂はこの春、こう言っていた。

「いつでも野球を辞める覚悟はできています。でも、それは今じゃない」

 6月1日の時点でメジャーへ上がれない場合、松坂は契約を破棄してFAとなる権利も有している。もちろん去年のメッツのように、ローテーションに歪みの生じたメジャーのチームが松坂を獲得する可能性はある。しかしそれも今のいい状態を、マイナーでの2カ月もの間、持続できてこその話だ。それが難しいからといって、今はまだ彼が日本で投げる姿は見たくない。まして、あの“松坂大輔”が野球を辞めるなんて、とんでもない。実際、今の松坂は、そう思えるだけの力感あふれるボールを投げているのだから──。

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