「間違いなく本物」。敵将が絶賛した田中将大の適応能力 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 だが、田中は3回から修正作業に入った。「自然と(試合に)入れていった部分。4回ぐらいからは集中力を高められた」と、落ち着きを取り戻したメンタルの部分も大きかったが、直球系の球を多めに投げ込むことでフォームの修正を計り、ステイバックが効いた本来の投球フォームを取り戻していった。田中はこのアジャストについて、胸を張ってこう答えた。

「それは今までの野球人生で積み重ねてきた経験というのがあったから、持ちこたえられたもの」

 日本で培ってきた修正能力を、メジャーのマウンドでも見事に実践してみせた田中。まさにメジャー初勝利の要因はここにあったわけだが、両軍の指揮官も田中の適応能力の高さに感心していた。

 ヤンキースのジョー・ジラルディ監督は「いい仕事をしてくれた。よく落ち着いてくれた。序盤は荒れていたが、よく自分を取り戻した。感情面をうまくコントロールし、成熟した投手だと感じた」と評価すれば、ブルージェイズのジョー・ギボンズ監督は「序盤はいくつかのミスがあり、我々はそれをとらえることができたが、田中はその状況を自ら建て直してみせた。間違いなく本物」と、最大限の賛辞を送った。

 重圧の中、見事に結果を導き出した田中は、「悪い中でも粘って、こういう風にゲームを作って、チームの勝ちに貢献できたことがすごく嬉しい。今後も悪いなりに、こういう投球を続けていけたらいいなと思いますね」と話したが、直後、笑いながら言い直した。

「その、悪い時にはね」

 調子の悪い時の修正能力こそ、投手として最高の技量。田中は初登板でその能力の高さを全米中に知らしめた。今後の活躍に期待が募るばかりだ。

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