今季メジャーをかき回す「サプライズチーム」はこの2球団! (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by Getty Images

 まず、今年のマリナーズで見てもらいたいポイントは、ジャスティン・スモーク(打率.238・20本塁打・50打点)の成長です。2010年途中にテキサス・レンジャーズから移籍してきたスモークは、「強打のスイッチヒッター」として期待されるも、結果を残せず伸び悩んでいました。さらに今オフ、コーリー・ハート(前ミルウォーキー・ブルワーズ)やローガン・モリソン(前マイアミ・マーリンズ)といったスモークと同じ一塁手が加入してきたことで、ポジションが危うくなっていたのです。しかし、今年のキャンプでコンパクトにバットを振り抜くスタイルに変えると、ロイド・マクレンドン新監督の求めている二塁打が激増しました。それにより、スモークは正一塁手の座を指名され、開幕戦のロサンゼルス・エンゼルス戦では2安打3打点をマーク。マリナーズを勝利に導き、チームに欠かせない選手に成長しつつあります。

 また、2009年のドラフト1巡目全体2位指名で鳴り物入りしたダスティン・アクリー(打率.253・4本塁打・31打点)も、バッティングスタイルを変更したことで生まれ変わりました。オープン戦では打率.382・OPS1.011をマークし、レフトのポジションを獲得。さらに開幕戦でも3打点と活躍し、ようやく実力の片鱗を見せ始めました。

 今年のマリナーズは、「1・2番コンビ」が勝敗のカギを握っていると思います。1番バッターは、昨年2月にヤンキースからトレードで移籍してきたエイブラハム・アルモンテ(打率.264・2本塁打・9打点)というドミニカ共和国出身の選手です。昨年8月末にメジャーデビューした24歳の若手ですが、マクレンドン新監督が彼の才能を高く評価しています。オープン戦では打率.178だったものの、開幕戦で1番に抜擢され、見事2安打を放って期待に応えました。そして2番バッターは、ブラッド・ミラー(打率.265・8本塁打・36打点)というアルモンテと同じ24歳の左バッターです。昨年ルーキーで76試合に出場し、今年のオープン戦ではリーグ最高長打率.836をマーク。さらにリーグ最多タイの17得点と大活躍して、2番バッターの座を射止めました。

 この若手ふたりが活躍すれば、マリナーズ打線は非常に面白くなると思います。1番・アルモンテ、2番・ミラー、3番・カノ、4番・スモークと、かなりの迫力です。昨年リーグ15チーム中12位だった得点数も、格段にアップするのではないでしょうか。

 ア・リーグ西地区のライバルは、いずれも多くのケガ人を抱えています。オークランド・アスレチックスは、エースのジャロッド・パーカーがトミー・ジョン手術で今シーズン絶望。レンジャーズはダルビッシュ有投手が開幕から故障者リスト入りし、他の先発陣もケガを抱えています。そしてエンゼルスも、アルバート・プホルスやジョシュ・ハミルトンら主力打者が故障がちです。上位3球団がケガ人続出で苦しむようだと、マリナーズが西地区の首位争いを引っ張る可能性も十分にあります。

 28年間プレイオフから遠ざかっているロイヤルズと、10年間で7度も最下位に沈んでいるマリナーズ。長らく低迷していた彼らが、久しぶりに見違えるような活躍を見せるかもしれません。今シーズン、サプライズを巻き起こせるかどうか、ぜひとも両チームの動向をチェックしておいてください。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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