川﨑宗則「逆境、いいじゃないか。笑っていこうぜ」

  • 石田雄太●文 text by Iashida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 開幕まであと一週間というところで、川﨑はマイナー行きを告げられた。ブルージェイズのジョン・ギボンズ監督は、「カワサキは開幕にはメジャーのチームにはいないが、シーズン中に必ず必要になるときがくるだろう」とコメントしている。マイナーに落とされようが、スタメンを外されようが、野球がうまくなりたいと、川﨑は他の選手のプレイを、いつも目を皿のようにして見つめている。そして、あれこれと妄想を膨らませて、今度はああしてみよう、こうしてみようと考えている。厳しい環境の中でも、いつも前へ出ることだけを考えている。

「野球は苦しむためのものじゃないんです。苦しいと思う気持ちはわかるけど、原点にあるのは、野球はおもしろいということ。野球を好きなんだという気持ちを思い出して、苦しむ自分を奮い立たせる。それが自分の中の楽しさなんだと思うんです。オレだって、素から元気なわけじゃない。元気が出ないときもあるし、ストレスもちゃんとある。悩みごともありますよ。でも、グラウンドに立てば、スイッチが入る。オレにとっての野球は、たかが野球じゃない。野球をすることが最高の生き方だと思ってるんです」

 ブルージェイズの3Aは、ニューヨーク州バッファローにある。ここには全米一と言っていい、美味いホットドッグがある。1927年創業の“Ted‘s”。昔ながらのミルクシェイク、オニオンリング、こんがり焼いたパンとソーセージの伝統的なホットドッグが味わえる。だから、それもいいじゃないか。野球ができて、美味いホットドッグも食べられて、メジャーを目指せる。そんなふうに逆境を笑っていたら、すぐに春はやってくる。バッファローからトロントへ、川﨑宗則が国境を越える日は遠くないはずだ。

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