移籍は大成功?新天地を選んだ大物メジャーリーガーたち (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 そして今シーズンは、球界屈指のスラッガーとリードオフマンがテキサス・レンジャーズで一緒にプレイすることになりました。球界屈指のスラッガーとは、昨年11月にイアン・キンスラーとのトレードで移籍してきたプリンス・フィルダーです。2007年のミルウォーキー・ブルワーズ時代に50本塁打を放って史上初の親子2代本塁打王となり、2012年にデトロイト・タイガースに移籍。三冠王のミゲル・カブレラと最強3・4番コンビを組んでいましたが、昨年は自己最低の25本塁打に終わってしまいました。

 しかしながら、ホームランの出にくいタイガースの本拠地コメリカパークから、ホームランの出やすいレンジャーズの本拠地グローブライフパーク・イン・アーリントンに移ることで、フィルダーは再びホームランを量産するかもしれません。過去5年間で1試合しか欠場したことがなく、3年連続でレギュラーシーズン162試合をフル出場しているのは大きな強みです。環境が変わって本来のスイングを取り戻せば、本塁打王争いに食い込む可能性も十分にあります。新天地への移籍は、フィルダーにとって吉と出る予感がします。

 一方、レンジャーズに移籍した球界屈指のリードオフマンとは、昨年までシンシナティ・レッズでプレイしていた秋信守です。昨年は107得点、112個のフォアボール、出塁率.423と、いずれもナ・リーグ2位の数字をマーク。1番バッターとして申し分ない成績を残しました。しかし昨年12月、「勝てるチームに移籍したかった」という理由で、レンジャーズと7年総額1億3000万ドル(約135億円)で契約。その結果、秋信守はアジア人初の1億ドルプレイヤーとなったのです。

 また、秋信守の入団によって注目すべきは、レンジャーズのスタメンに名を連ねる顔ぶれでしょう。ピッチャーは日本人のダルビッシュ有投手、キャッチャーはプエルトリコ出身のジオバニー・ソト、セカンドはオランダ領キュラソー島出身のジュリクソン・プロファー、サードはドミニカ共和国出身のエイドリアン・ベルトレ、ショートはベネズエラ出身のエルビス・アンドラス、センターはキューバ出身のレオニス・マーティン、そしてレフトは韓国出身の秋信守。なんと計8カ国の選手が織り交ざったスタメンとなり、かつてのロサンゼルス・ドジャースを彷彿とさせるような多国籍軍団となりました。ダルビッシュ投手が相手打線を封じ、秋信守が決勝のホームを踏む――。そんなシーンを今年は何度も見られるかもしれません。

 そして最後、ニューヨーク・メッツに移籍した外野手のカーティス・グランダーソンにも触れておきましょう。2011年と2012年に2年連続で40本塁打以上を記録したグランダーソンは、ヤンキースの強力打線の中心的な存在でした。しかし昨年はケガに泣き、わずか61試合で打率.229・7本塁打・15打点と、不本意なシーズンとなりました。その結果、グランダーソンは一転して戦力外扱いを受けることになり、今オフにメッツと4年総額6000万ドル(約61億8000万円)で契約を交わし、新天地へと移ったのです。

 メッツへの入団会見でグランダーソンは、「本当のニューヨーカーはメッツファンだ」と語り、古巣のヤンキースを大いに刺激して物議を醸しました。そのぐらい、今シーズンに賭けるグランダーソンの意気込みは強いのでしょう。今年で32歳になりますが、過去に20盗塁以上を3度記録するなど、パワーだけでなくスピードも兼ね備えた選手です。メッツの本拠地シティ・フィールドはグラウンドが広いので、彼の持ち味であるスピードが生きてくるのではないでしょうか。

 田中将大投手の影響で今オフはピッチャーに注目が集まりましたが、大物バッターたちの移籍も見逃せません。新天地を求めた彼らが成功するのか否か、ぜひ開幕から注目してください。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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