移籍は大成功?新天地を選んだ大物メジャーリーガーたち

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 カノの移籍が新しい時流なら、王道と言うべきコースを辿ったのが、ジャコビー・エルズベリーとカルロス・ベルトランでしょう。昨年、エルズベリーはリーグ最多の52盗塁を記録して自身3度目の盗塁王に輝き、ボストン・レッドソックスの1番バッターとしてワールドシリーズ制覇に大きく貢献しました。しかし、今オフにFAになると、まさかの宿敵ヤンキースと7年総額1億5300万ドル(約156億7000万円)で契約を交わし、ピンストライプのユニフォームを選んだのです。このニュースも、全米中に大きな衝撃を与えました。

 レッドソックスから、ライバルのヤンキースへ――。この流れは、古くはベーブ・ルース(1920年~)を始め、メジャーを代表するリリーフエースだったスパーキー・ライル(1972年~)、安打製造機と呼ばれたウェイド・ボッグス(1993年~)、「ロケット」の異名を持つロジャー・クレメンス(1999年~)、そしてボストンの人気者だったジョニー・デイモン(2006年~)と、長きに渡る歴史があります。そして彼ら元レッドソックスのスター選手はヤンキースに移籍後、世界一に輝きました。この流れをエルズベリーも継承するのかどうかが見どころです。

 また、エルズベリーが今年守る予定のセンターというポジションも注目でしょう。ジョー・ディマジオ(1936年~1942年、1946年~1951年)、ミッキー・マントル(1951年~1968年)、ボビー・マーサー(1965年~1966年、1969年~1974年、1979年~1983年)、そしてバーニー・ウイリアムス(1991年~2006年)と、ヤンキースの「センター」は花形のポジションで、いわばスターの聖地なんです。そんな歴史のあるポジションを守るエルズベリーは、このプレッシャーにも打ち勝たなくてはなりません。

 ただ、エルズベリーはスピードだけでなく、2011年には32本塁打を放つなど、パワーも兼ね備えています。ライトが深いレッドソックスのフェンウェイパークから、逆にライトの浅いヤンキースタジアムを本拠地とすることで、ホームランの量産も期待できそうです。きっと新天地で大いに活躍してくれることでしょう。

 一方、メジャー17年目のベルトランも、FA後、新天地にヤンキースを選びました。昨年はセントルイス・カージナルスのリーグ優勝に貢献し、初めてワールドシリーズに出場。そして今オフ、3年総額4500万ドル(約46億1000万円)でピンストライプの袖に腕を通しました。ベルトランの最大の魅力は、なんといっても大舞台に強いことでしょう。2004年のヒューストン・アストロズ時代にはメジャー史上タイ記録となるポストシーズン8本塁打を記録し、通算記録も51試合でOPS(出塁率+長打率)1.128という驚異的な数字を残しています。

 ワールドシリーズ制覇が命題のヤンキースにとって、ベルトランは実に最適な存在です。ただ、今年で37歳。ここ2年間はシーズン後半戦に入ってから成績を落としています。ライトのレギュラー候補と言われていますが、ベルトランはDHなどを兼任しながら体力を温存してポストシーズンに臨むでしょう。そういう背景を考えても、外野のどこでも守れるイチロー選手の存在は改めて大きいと思います。ベルトランの移籍が成功と言えるかどうかは、イチロー選手がカギを握っているのではないでしょうか。

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