進化し続ける肉体と野球脳。3年目のダルビッシュ有が凄い! (3ページ目)

  • 佐藤直子●文 text by Sato Naoko
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 2012年の移籍以来、ダルビッシュの投球を最も近くから見守るマダックス投手コーチは「今年は楽しみだ」と目を細める。

「もちろん、これまで2年間も十分すぎる成績を残してきた。でも、ファンやメディアをはじめ周囲の人々は、どんないい成績を残しても満足することはない。皮肉な話だが、ダルビッシュはこれまで期待に見合った、あるいは期待以上のパフォーマンスを見せてきた。だから、周囲は期待というハードルをさらに一段高く設定する。去年はサイ・ヤング賞レースで2位になり、防御率は2点台をキープした。それでも、球数が多すぎるとか、長い回を投げられないと指摘する人もいる。一流であり続けることは、どうして簡単なことじゃないんだよ(笑)。でも、ユウは今年もしっかりやってくれる。彼はそれだけの準備をしているし、打者との駆け引きに負けない屈指の“野球脳”を持っているからね」

 球数といえば、まだオープン戦で1試合しか投げていないが、球数減少に向かう光明が見えた。ロイヤルズ戦では打者8人と対決し、いずれも初球はストライク。データサイト「FAN GRAPHS」によれば、ダルビッシュの昨季の初球ストライク率は57.6パーセントと低かった。駆け引きの中で初球ボールから入る戦略もあるだろうが、大半の場合、初球でストライクが奪えれば、投手有利な状態で勝負を進められ、無駄な球数を省くことにもつながるだろう。

 開幕投手も正式に通達された今、ダルビッシュの周囲を騒がせる雑音は何もない。3月31日フィリーズ戦まで、思いのままに自己調整に専念できる。現在、メジャーの話題は田中将大(ヤンキース)に集中しているが、世間が再びダルビッシュに目を向けなければならない、そんなパフォーマンスを、開幕から見せつけてくれるような予感がする。

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