進化し続ける肉体と野球脳。3年目のダルビッシュ有が凄い! (2ページ目)

  • 佐藤直子●文 text by Sato Naoko
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 3年目の春は極めて順調に進んでいる。昨シーズン終盤に痛めた腰の負担を減らすために、少しだけトレーニング方法を変えたことが功を奏しているようだ。それまでは、ウエイトトレーニングで重いウエイトを使っていたため、肩周りと腰回りの筋肉がより大きく見える印象だった。だが、このシーズンオフから重いウエイトを使った反復回数の少ないトレーニングはやめ、軽めのウエイトを使い、反復回数を増やすことで筋肉に刺激を与えた。その結果、体全体が引き締まり、"体重大幅減"の印象を与えることになった。だが、ダルビッシュ曰く「体重は1キロくらいしか変わっていないと思います」。事実、レンジャーズでストレングスコーチを務めるホゼ・バスケス氏も「見た目は変わったかもしれないが、体重を含め、体力を示す数値は何も変わっていない」と明かす。

 ここで勘違いしてはいけないのが、重いウエイトを使ったトレーニングが、必ずしも悪いというわけではない、ということだ。ダルビッシュの場合、これまでのウエイトトレーニングで積み重ねた筋肉の素地がある。重いウエイトで作り上げた筋肉があるからこそ、軽いウエイトを使ったトレーニングに切り替えても効果がある、というわけだ。ダルビッシュ自身の言葉を借りれば、今年の体は「ボヤッとしていた筋肉を、より引き締まった状態」に変化している。

 実際のピッチングはどうだろう? マイク・マダックス投手コーチが「誰よりも早く仕上がっている。驚いた」と目を丸くしたように、オープン戦初登板を終えた段階では、マイナス点は何も見つからない。状態のよさは本人も感じているようだ。

 ブルペンでの投球練習の段階から、ダルビッシュが口にするのは「力強い球が投げられている。しっかり制球できている」ということだ。実際、キャンプイン翌日に行なわれた打撃練習での登板でバッテリーを組んだ捕手ジオバニ・ソトは、「感覚としては、速球は時速94マイル(約150キロ)くらい出ているものもあった」とした。2月27日(現地時間)にオープン戦初先発したロイヤルズ戦では、バトラーに対して投げた速球が時速96マイル(約154キロ)を計時。ロイヤルズの若き主砲は「何だかダルビッシュだけオフシーズンを迎えずに、去年の調子のよさを続けているような気がするよ」と思わず苦笑いした。

 もちろん、野球は球の速さを競うスポーツではない。だが、ダルビッシュが持つ多彩な変化球を生かすも殺すも、投球の基本線となる速球の仕上がり次第。オープン戦序盤の段階で、力強い速球をしっかりと制球できているということは、元々、質の高い変化球にさらなる効果が期待できることにもなる。

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