田中将大がメジャー初登板で払拭した「仙台での不安」 (3ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 昨年、WBC日本代表でのゲームが行なわれたアリゾナとは違い、フロリダは湿度があることも手伝いボールはしっかりと指にかかっていた。有効的にアウトコースをつき、米国のゾーンをチェックできたことが無失点につながった。ジョー・ジラルディ監督は「速球は低めを突いていて、制球もスプリットも良かった」とその投球に賛辞を送った。

 通用する手応えはあったか。そう問われた田中は「まだ2イニング投げただけですし、今日初めて投げただけで、通用するとか言っていたら、みんなどうなるんですかね」と笑みがこぼれた。確かにその通りだ。日本とは違い、投げ込みもできない。全体の練習時間も短い。その不足分にこれから対応していかなくてはいけない。やりたくても、ヤンキースに練習を制限されている部分もあり、課題はたくさんある。そう甘くない世界と一番本人がわかっている。だが、これもすべては体験してみてから、考えればいい。一歩ずつ段階を踏んでいく。

 試合後のクラブハウスのロッカー。これまでの強ばった面持ちはすーっと消え、柔らかみが増していた。どれだけ初登板まで不安だったかが、よくわかる。

 グラウンドを歩けば「1億5500万ドルの男」というフレーズがついてまわる。長距離走で少しでも遅れたならば、「走れない男にヤンキースは多額の金額を支払った」などという辛らつなニューヨークメディアに報じられる。そんなプレシャーの中、田中は現実と向き合い戦っている。

「まだまだしっかりと状態を上げていかなければいけないと思う。まずはいいスタートが切れたと思いますけど、これからも調整を続けていきたいと思います」

 田中はピンストライプのユニホームで鮮烈なデビューを飾った。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る