田中将大がメジャー初登板で払拭した「仙台での不安」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 この試合でマスクをかぶっていたのは、フランシスコ・セルベリだった。スプリング・トレーニングが始まってから、何度もブルペンでボールを受けてきた。「試合になると格段に良くなった。球は速くなった。コントロールも良くなった」と田中には高い適応能力があると証言した。また、今季アトランタ・ブレーブスから移籍してきた正捕手・ブライアン・マッキャンは、田中のスプリットを「Falls off the table」(テーブルからボールが落ちてくるようだ)と表現し、落差の大きさに驚いていた。

 田中にとって大きな、大きな一歩だった。

「僕は初めて打者に対戦したわけなので。みんな初めて。相手もそう。また同じ相手に投げたら、結果は変わってくるでしょうし、反応も変わってくる。それでも空振りしてくれた打者の反応を見られたのは良かった。僕も研究は続けていかないといけない」

 何よりも体感することを求めていたからだ。

 渡米前の2月上旬のことだった。田中は古巣・楽天の本拠地、コボスタ宮城の室内練習場で、ひとり黙々とトレーニングをしていた。ボールだけはMLBの使用球だが、寒い仙台で傾斜も固さもメジャーとは違うマウンドでキャッチボールを行なうなど、できることは限られていた。田中は言った。「僕は今、仙台にいるわけで。アメリカに行った後のことは初めてのことなので、今の僕にはわかりません。実際に球場に行き、ユニホームを来て、マウンドに立ってから実感が湧いてくると思います」と、まずは自分がその場に立ち、感じないとメジャーのイメージはできないと語った。日本とは違う調整方法も、ストライクゾーンの違いも、言葉の壁もまずは「行ってみてからです」と繰り返していた。ようやく、オープン戦といえども、メジャーリーグで投げている実感が持てた。好投した田中はこの第一歩からまた大きく成長の曲線を描いていく。

 なかでも収穫は、ストライクゾーンを体感したことにあった。メジャーリーグは日本よりも外角が広くストライクゾーンが作られている。「そんなにむちゃくちゃ広いというわけではなかったですけどね」と振り返ったが、田中の投球は外角のゾーンを確認しているようだった。32球中22球が外角のコース。滑ると言われるボールの違いも1、2球だけ指から抜けたボールがあったが、すぐに修正できた。カウントを取る球、空振りを奪う球と投げ分けて、打者を打ち取っていた。ボールをほとんど思い通りに操れた。

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