賛否両論。外国人記者たちが見た「田中将大の可能性」 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 対照的な見方をしているのが、ESPNのワレス・マシューズ記者だ。

「タナカの実力はまだまったくわからない。未知数だ。試合での投球を見てみないとわからないが、気になるのはヤンキースが彼を赤ん坊のように扱っていることだ。日本から来た場合はマウンドやボールの違いに加え、文化の違いもあるから適応しなければならないことがたくさんあると首脳陣は言っているが、サバシアや黒田と同じ練習でその課題に取り組めているのかな。タナカと我々は食事会もしたが、まだ彼のパーソナリティーも見えない。とにかく早く実戦を見てみたい。それからだね」

 辛口のマシューズ記者は、「年俸2200万ドルの投手として15勝以上、防御率3.50は最低限のノルマ」とニューヨークのメディアらしい見解を示した。

 また、ニューズデイのエリック・ボランド記者は、こんな面白い話を聞かせてくれた。

「練習を見ていても、話を聞いてみても"ビジネスライク"で、マニュアル通りにきっちりこなすタイプという印象だ。投手としての力量はこれからのオープン戦の内容が重要という見方もあるが、たとえ彼が打ち込まれることが多くても、それは関係ないと思っている。みんなが言うように、タナカは適応しなければならないことが多い。その課題に取り組むのがオープン戦なのだと思う。だから、結果ではないはずだ。サバシアがヤンキースに移籍して来た2009年、彼は自分の調整に徹していた。その結果、オープン戦では防御率が6点台だったが、シーズンでは19勝してワールドシリーズ制覇の立役者となった。タナカもこのオープン戦ではやることがたくさんあるはずだから、結果にとらわれる必要はないと思う。とにかく、彼のアプローチを見ていきたいね」

 米国の記者でさえ「日本選手には適応するまでの時間が必要」という表現をすることに時代の流れを感じるが、それ以前に最も重要なことは自分の力を出し切ることだ。日本で培ったものを出し、適応は必要性を感じてから取り組む。この考えは野茂英雄をはじめ、過去に海を渡った先人たちも繰り返してきたものだ。

「自分の投球スタイルで投げたい」

 田中は日本で残した実績とプライドを胸に、オープン戦初登板から闘争本能むき出しに相手を抑えにかかるに違いない。

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