名門ヤンキースの一員となる田中将大。ノルマは「7年で100勝」

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 また、ヤンキースのエースと称されるためには、決して負け越してはいけません。過去にヤンキースで成功した先発投手を見ると良く分かります。たとえば、昨年限りで引退したアンディ・ペティットは、メジャー18年間で負け越したシーズンは一度もありません。前出のムッシーナも、1992年にオリオールズのローテーションに入ってからの18年間で、負け越したのは1回だけ。2001年にヤンキースに移籍してからは、すべて勝ち越しています。毎年優勝争いを演じるためにも、ヤンキースの先発投手には高い勝率が求められるのです。

 現在、ヤンキースのエースとして君臨するサバシアも、2001年のデビュー以来、13年連続してふたケタ勝利を挙げ、一度も負け越したシーズンはありません。その結果、サバシアの昨年までの通算成績は、205勝115敗。200勝以上という数字も素晴らしいのですが、何より負け数の少なさのほうが特筆すべきことでしょう。サバシアはメジャー13年間で90勝分の貯金を稼いでいるのです。田中投手がヤンキースの新たなエースとなるためには、毎年15勝前後を記録して、かつ必ず勝ち越してシーズンを終えることです。7年間で100勝、負け数は50~60ぐらいが理想だと思います。

 ただ、これだけ期待されるのは、田中投手がメジャーで高く評価されているからです。メジャーリーグには「スカウティングレポート」という、最高が80ポイントで最低が20ポイント、10ポイント単位でランクする尺度があるのですが、田中投手はストレート、スライダー、そしてSFF(スプリット・フィンガード・ファストボール)がすべて70ポイントという高評価を得ています。平均値は50ポイントで、一流ピッチャーでも70ポイントと評価される球種は1個か2個ぐらい。3つの球種で70ポイントという評価は、非常に珍しいことです。いかに田中投手がアメリカで期待されているかが、このレポートからも分かるでしょう。

 たしかに、田中投手に課せられたノルマは非常に高いと思います。しかし、それが名門ヤンキースに大型移籍した者の使命です。毎年コンスタントに成績を残すためにも、ケガすることなくメジャーリーグで頑張ってほしいと思います。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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