日本人メジャーリーガー誕生50年。先人たちの軌跡を振り返る (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by Getty Images

 そして1997年5月、さらに歴史的な出来事が起こります。ニューヨークを本拠地とする名門ヤンキースに、伊良部秀輝投手が入団することになったのです。メジャーリーグ解説者のパンチョ伊東さんでさえ、「ヤンキースだけには、日本人選手は誕生しない」と昔から言っていただけに、本当に驚きました。当時のメジャーリーグは「夢のまた夢の世界」で、その中でもヤンキースは「名門中の名門」です。そんなチームに日本人選手が加わるなど、まったく考えられませんでした。しかし、オールスターゲーム明けの7月10日、超満員のヤンキースタジアムで伊良部投手が先発デビューを果たしたのです。彼がマウンドに立ったシーンは忘れることができません。そして、栄光のピンストライプのユニフォームに身を包んだ伊良部投手は初先発で快投を演じ、いきなりメジャー初勝利をマークしました。

 その後、1998年に吉井理人投手がニューヨーク・メッツ、1999年に木田優夫投手がデトロイト・タイガース、大家友和投手がボストン・レッドソックス、2000年に佐々木主浩投手がシアトル・マリナーズと、アメリカ全域に日本人選手が散らばっていきました。そして2001年、またも歴史的な出来事が訪れます。イチロー選手がマリナーズからデビューを果たし、「初の日本人野手メジャーリーガー」が誕生したのです。

 日本人野手が誕生した当初は、イチロー選手を筆頭に、新庄剛志選手(メッツ)、田口壮選手(セントルイス・カージナルス)、そして松井秀喜選手(ヤンキース)と、外野手ばかりでした。しかし2004年、松井稼頭央選手が内野手としてメッツに入団したことで、新たな流れが生まれました。しかも、いきなり守備の要とも言うべきショートでの起用でしたから、これも特筆すべき歴史の1ページでしょう。この移籍を境に、2005年に井口資仁選手(シカゴ・ホワイトソックス)、中村紀洋選手(ドジャース)、2007年に岩村明憲選手(タンパベイ・デビルレイズ)、2011年に西岡剛選手(ミネソタ・ツインズ)、そして2012年に川崎宗則選手(マリナーズ)と、多くの内野手が海を渡りました。このように、松井稼頭央選手の渡米以降、難しいとされる「日本人内野手のメジャー挑戦」は今もずっと続いています。

 そして、2006年にマリナーズからデビューした城島健司選手についても、触れないわけにはいかないでしょう。言葉の壁もあって「内野手以上に厳しい」と言われるキャッチャーというポジションに挑戦し、見事、日本人初のメジャーリーガー捕手となったのです。その後、彼に続く選手はまだいませんが、城島選手の功績は非常に大きいと思います。日本の未来につながる歴史的な第一歩と言えるでしょう。

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