メジャーリーグ2013。ひっそりと引退していった男たち (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 一方、今年ひっそりと引退したピッチャーの中で、まず最初に取り上げるべきは、フィラデルフィア・フィリーズのロイ・ハラデイ(36歳)でしょう。2013年、右肩の故障に悩まされたハラデイは、4勝5敗でシーズンを終えた後にFAとなり、最後は古巣のトロント・ブルージェイズと1日契約して野球人生にピリオドを打ちました。

 ハラデイの個人的な思い出は、2001年までさかのぼります。1998年にブルージェイズからメジャーデビューしたハラデイは、先発2試合目でいきなり9回ツーアウトまでノーヒットという快投を演じ、一躍有名になりました。しかしその後、スランプに陥り、2001年にはマイナーのシングルAまで降格。どん底からの再スタートを余儀なくされたのです。ちょうどそのとき、マイナーリーグで投げているハラデイを現地で観戦しました。1995年のドラフト1巡目(全体17位)投手がどんな状態なのか見に行ったのですが、まさかあそこから復活し、殿堂入りの可能な偉大なるピッチャーになるとは思ってもいませんでした。

 ハラデイのターニングポイントとなったのは、心理カウンセラーからのアドバイスでした。私生活の乱れがピッチングに影響を及ぼしているということで、そこを改善すると、2年後の2003年には22勝7敗でサイ・ヤング賞を受賞。さらにフィリーズ移籍1年目の2010年にも21勝10敗で2度目の受賞を果たし、両リーグで栄冠に輝くという快挙を成し遂げました。ちなみに、2003年に開幕投手を務めたときのヤンキース戦は、松井秀喜選手のメジャーデビュー試合。初めてバッターボックスに立った5番の松井選手に、レフト前タイムリーヒットを打たれました。しかしその後、抜群のコントロールとシンカーを武器にメジャーで暴れ回り、後日、松井選手が「最も打ちにくい投手」と評したのは有名な話です。

 ハラデイの通算成績は、203勝105敗・勝率.659。勝率.650以上は、超一流の証と言えるでしょう。さらに特筆すべきは、完投数です。分業制となった現代のメジャーにおいて、通算67試合の完投数は極めて多い。現役2位が37完投のCC・サバシア(ヤンキース)ですから、いかに群を抜いた数字なのかが分かります。

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