日本も見習うべき「カージナルス流」勝てる組織の作り方 (3ページ目)

  • 佐藤直子●文 text by Sato Naoko
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 カージナルスのジョン・モゼリアックGMは、2007年に現職に就任して以来、組織として、メジャーを頂点とする「縦」の連係を強く意識している。カージナルスの一員としてメジャーレベルで求められるプレイ、心構え、振る舞いは何かを、各レベルの首脳陣、監督やコーチを媒介し、選手に伝えている。

「『あれをしろ』『これはしちゃいけない』と頭ごなしに押しつけるようなやり方はしない。選手と契約する時に伝えるのは、カージナルスは勝利を伝統とするチームであり、常に勝つことを期待されているチームであるということ。そして期待されるのにふさわしい選手になってほしいということだけだ。幸運にもこのチームには若手の手本となるベテランがいる。妥協を許さないベテランの姿を見て、若手たちも懸命に練習に励む。メジャー昇格後も、なお成長できる環境がカージナルスにはあるんだ」

 トニー・ラルーサという名監督の後を引き継いで2年。プレイオフ進出は当たり前という伝統と期待に応え続けているマイク・マシーニー監督もまた、ルーキーたちの活躍を支えるベテラン勢の存在を挙げる。

「このチームの面白いのは、ベテラン選手や素晴らしいキャリアを送っている選手ほど、懸命に練習する。ウェインライト、 モリーナ、ベルトラン、ホリデー......。彼らが熱心に練習に励み、トレーニングを積む姿を見て、若手が自分も同じことをやってみようと真似する。ワカやケリーは、ウェインライトの後をついて、先発投手としてのルーティンワークを学んでいる。ベテラン勢もまた、自分が持つ知恵や経験を若手に伝えることを厭(いと)わない。ベテランが若手を受け入れ、育てることは、今に始まったことじゃない。これもまた、カージナル・ウェイだと思うんだ」

 2年ぶりの世界一にはあと一歩及ばなかったが、組織としての骨太さは存分に見せつけた。今季味わった悔しさは、将来有望な若手選手たちが大きく成長する原動力となるだろう。そして、彼ら若手が秘める大きな可能性は、ワールドシリーズでMVPを獲得した "ビッグパピ"ことオルティスにも強く響いた。

「いやぁ、あの若手投手陣がみんな同時に年俸調停権を手に入れた時、カージナルスは大変なことになるぞ。間違いなく大金が必要になる。このワールドシリーズという舞台で、あのレベルの高いパフォーマンスだ。とんでもない投手陣を抱えている。言っておくぞ、アイツらは本物だ」

 チームとして進むべき方向を明確に定め、若手の育成に力を注ぐ「カージナル・ウェイ」。日本の球団も学ぶべき点が多い。

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