MLB事件簿2013。伝説のクローザー、最後の夜 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

第2位 球界を揺るがせた薬物規定違反の数々

 明るいニュースの多い中、ひとつだけ暗い影を落としたのが、メジャーリーガーの薬物規定違反でした。まずは7月22日、メジャーリーグ機構(MLB)はミルウォーキー・ブルワーズの本塁打王ライアン・ブラウンに今季残り試合の出場停止を発表。さらに8月5日、ヤンキースのアレックス・ロドリゲスをはじめ、計13名に同処分を科したのです。

 特にA・ロッドには、今季残り試合と来季の全試合、計211試合の出場停止という厳しい処分。一方、テキサス・レンジャーズのネルソン・クルーズや、タイガースのジョニー・ペラルタなど他の12名は、50試合の出場停止にとどまりました。

 現在、A・ロッドは処分に対して裁判を起こしているので、オフシーズンはこの話題で持ちきりになることでしょう。現状はかなり不利と言われていますが、今後どんな結末になるのか注目です。

第1位 世界一のターニングポイントは第4戦のスリーラン

 やはり第1位は、ボストン・レッドソックスの世界一を挙げないわけにはいかないでしょう。前年ア・リーグ東地区最下位から頂点を掴んだストーリーは、大きな感動を生みました。1919年以降、ずっと世界一から遠ざかっていたものの、2004年に「バンビーノの呪い」を解いてからというもの、2007年、そして2013年と、レッドソックスはここ10年間で3度もワールドチャンピオンに輝いています。

 クローザーの上原浩治投手、そして中継ぎの田澤純一投手の活躍ぶりは、改めて説明する必要もないでしょう。彼らふたりの存在なくして、レッドソックスのワールドシリーズ制覇は成し遂げられなかったと思います。ただ、一番のターニングポイントとなったのは、第4戦ではないでしょうか。

 1勝2敗で迎えた第4戦、レッドソックスは窮地に立たされていました。敵地セントルイスでの3連戦の初戦(第3戦)を落としたので、残り2戦とも負けてしまうと、ホームに帰ることなくシリーズが終わってしまいます。そんなとき、レッドソックスを救ったのが、ジョニー・ゴームスの勝ち越しスリーランでした。それまでのゴームスはまったくの不振で、第4戦も試合直前に起用が決まったほど。しかし、大事な場面で持ち前のパワーを発揮したのです。あの一発で勝利を収めたレッドソックスは、続く第5戦もカージナルスを粉砕し、そしてホームの第6戦で優勝を決めました。あのスリーランがなければ、敵地で敗れ去っていてもおかしくなかったと思います。それほど衝撃的な一発でした。

 今回は印象に残った出来事を10個挙げましたが、さらに掘り下げればキリがありません。さて、来シーズンはどんな驚く出来事が待っているのでしょうか。オフシーズンも話題豊富なメジャーリーグから目が離せません。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る