MLB事件簿2013。伝説のクローザー、最後の夜 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 そして今シーズンも、カブレラの勢いは止まりません。開幕2ヵ月の段階で、打率リーグ1位(.366)、本塁打リーグ2位タイ(17本)、打点リーグ1位(65点)と、驚異的な数字で2年連続三冠王に突き進んでいたのです。しかし、そんなカブレラに待ったをかけた選手が現れました。それが、ボルチモア・オリオールズのクリス・デービスです。デービスは開幕直後からホームランを打ちまくり、前半戦だけで37本塁打をマーク。昨年三冠王のカブレラに真っ向から勝負を挑んだのです。

 その結果、デービスは球団記録となる53本塁打、138打点をマークし、ア・リーグ2冠を獲得。カブレラの2年連続三冠王の夢を打ち砕いたのでした。ただ、カブレラの成績も、昨シーズンと比べて劣っているわけではありません。打率は昨年より1分8厘も上げて首位打者となり(.330→.348)、本塁打数は昨年と変わらず(44本→44本)、そして打点も2点減っただけです(139点→137点)。本塁打、打点ともにリーグ2位という成績なので、デービスが大ブレイクしなければ2年連続三冠王になっていたでしょう。来シーズン、カブレラに勝ったデービスがどんな活躍を見てくれるのか、新しいスタープレイヤーに注目です。

第3位 史上最高のクローザー、感動のフィナーレ

 ニューヨーク・ヤンキースひと筋19年、歴代最多の通算652セーブを誇る史上最高のクローザー、マリアノ・リベラが引退しました。オールスター選出13回、セーブ王3回(1999年、2001年、2004年)、そしてワールドチャンピオンに輝くこと5回......。1990年代後半からの常勝ヤンキースの歴史は、リベラの歴史でもあります。そんな絶対的守護神が、ついにマウンドを降りたのです。

 9月26日、今季ヤンキースタジアム最終戦のタンパベイ・レイズ戦。リベラの最後の雄姿を見ようと、4万8000人を超えるヤンキースファンが見守る中、試合は始まりました。そして、ついにその瞬間が訪れます。8回ワンアウト、1、2塁の場面で守護神リベラが登場しました。その後、9回ツーアウトまで4人すべてを打ち取ると、ベンチから出てきたのは、ジョー・ジラルディ監督ではなく、長年一緒にプレイしてきたキャプテンのデレク・ジーターと、今シーズンで引退を表明したアンディ・ペティット。なんと、盟友ふたりがマウンドに歩み寄って、リベラに交代を告げたのです。リベラはペティットに抱きつき、しばらく号泣したあと、ファンのスタンディングオベーションの中、ヤンキースタジアム最後のマウンドを降りていきました。こんな感動的な場面は、かつて見たことがありません。

 ジャッキー・ロビンソン(黒人初のメジャーリーガー)のデビュー50年を記念して、1997年に30球団すべての背番号42が永久欠番となったため、リベラの引退によって、現役で42番を背負ってプレイしていた選手はゼロになりました。しかし、リベラの42番も永久欠番にすると発表されましたので、ヤンキースではビル・ディッキー(1930年代から1940年代前半まで活躍した捕手)とヨギ・ベラ(1950年代にリーグMVPに3度輝いた捕手)の背負った『8番』に続く、「複数選手の永久欠番」となります。

 来シーズン、リベラの姿を見られないのは寂しいですが、歴史に残る大投手の最後を飾った素晴らしい演出は、永遠に語り継がれることでしょう。

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