MLBプレイバック2013。メジャー史に残る「3つの悲劇」

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

第9位 現役最高のメジャーリーガーはプロ2年目の22歳

 2013年のロサンゼルス・エンゼルスはプレイオフに進出できず、日本であまり注目されないままシーズンを終えました。敗因のひとつは、期待されたアルバート・プホルス(打率.258・17本塁打・64打点)や、新加入のジョシュ・ハミルトン(打率.250・21本塁打・79打点)が実力を発揮できなかったことでしょう。その結果、オークランド・アスレチックスやテキサス・レンジャーズに大きく引き離され、ア・リーグ西地区3位と低迷しました。

 しかし、その中でひとり気を吐いていたのが、昨シーズン、ア・リーグ新人王に輝いたマイク・トラウトです。2012年も大活躍したのですが(打率.326・30本塁打・83打点)、2013年のトラウトはさらに進化していました。今シーズン(打率.323・27本塁打・97打点)は個人タイトルこそ獲っていないものの、すべての部門で高い数字をマーク。33盗塁はリーグ8位、190安打はリーグ4位タイ、そして109得点と110四球はリーグ1位を記録しています。また、リーグ2位の出塁率.432は球団新記録、そしてWAR(※)10.4は2年連続してメジャー1位、さらに「25本塁打・30盗塁・100四球」はア・リーグ史上初と、まさに記録づくしなのです。

(※)WAR=各ポジションの平均選手と比べ、その選手がどのぐらいチームの勝利数を上積みしたかという指標。平均的な選手は『WAR=2.0』。

 その結果、トラウトはアメリカ随一の野球専門誌『ベースボール・アメリカ』が選出するプレイヤー・オブ・ザ・イヤー(最優秀選手)に2年連続で選ばれました。5月21日のシアトル・マリナーズ戦ではア・リーグ最年少(21歳288日)でサイクルヒットを達成するなど、今シーズンのトラウトは2年目のジンクスを感じさせない活躍ぶりです。この調子で成長していけば、メジャー初の3000万ドル(約29億5000万円)プレイヤーになっても不思議ではありません。今、現役最高のメジャーリーガーは、「マイク・トラウト」と言っても良いのではないでしょうか。

第8位 アメリカプロスポーツ史上ワースト記録がついにストップ

「今年こそは」と思っていましたが、ついにあの記録がストップしました。そう、ナ・リーグ中地区に所属するピッツバーグ・パイレーツの「20年連続負け越し記録」です。昨シーズンのパイレーツも、ワースト記録を阻止する寸前まで奮闘しました。ところが、9月に7勝21敗と大失速。パイレーツファンの夢は、もろくも崩れ去りました。しかし今シーズン、パイレーツは両リーグ通じて50勝一番乗りを果たし、勢いを失うことなく94勝68敗で悲願の勝ち越しを達成。それどころか、貯金26の堂々たる成績でワイルドカードとなり、21年ぶりのプレイオフ進出も果たしました。

 ピッツバーグの人々にとって、パイレーツというメジャーリーグ球団は地元の誇りでした。1970年代に2度の世界一に輝き、1990年代は地区3連覇。街を代表するプロスポーツチームだったのです。ところが最近では、NFLのスティーラーズが2005年と2008年にスーパーボウルを制覇し、NHLのペンギンズも2009年にスタンレーカップを獲得。地元の両プロスポーツチームが全米を制したことにより、パイレーツ人気は下火となっていったのです。しかし、今シーズンの古豪復活で、パイレーツは人気を取り戻しました。ワースト記録をストップさせた今、再びピッツバーグの街がベースボールで盛り上がりそうな予感です。

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