MLB個人タイトル2013「初栄光の男たち」 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 アルバレスはプロ入りから3年目の2010年、順調にマイナーの階段を上がってメジャーデビュー。そして昨年は初の30本塁打をマークし、今年は36本塁打で初タイトルを手にしました。パイレーツの選手として本塁打王に輝いたのは、1973年のウィリー・スタージェル以来、40年ぶりの出来事です。まさに順風満帆に成長を遂げていると思います。また、今年のディビジョンシリーズではホームラン3本、すべて420フィート(約128メートル)以上の特大アーチを放つなど、華々しいポストシーズンデビューも果たしました。まだ26歳と若いプレイヤーなので、今後の活躍に注目です。来年は薬物規定違反で出場停止となったライアン・ブラウン(ミルウォーキー・ブルワーズ)らと、激しい本塁打王争いを演じてくれるのではないでしょうか。

 そして最後に取り上げたいのが、初めてナ・リーグの盗塁王となったニューヨーク・メッツのエリック・ヤング・ジュニア(打率.249・2本塁打・32打点・46盗塁)です。なにより今回のタイトル獲得で特筆すべきは、史上初となる「親子での盗塁王」に輝いたことでしょう。彼の父は、1992年から2006年までメジャーで15年間活躍し、通算465盗塁をマークしたエリック・ヤング・シニア。1996年のロッキーズ時代に盗塁王となったスピードスターでした。

 そんなDNAを受け継いだヤング・ジュニアは、2004年に父と同じロッキーズに入団し、2006年のシングルA時代には87盗塁をマーク。そして2009年にメジャーデビューを果たしました。ただ、1番バッターとして期待されたもののレギュラーに定着できず、今年6月18日、ロッキーズからメッツにトレードとなったのです。

 しかしここで、大きな転機が訪れました。メッツには2003年から2011年まで1番バッターに、ホセ・レイエス(トロント・ブルージェイズ)という過去3度盗塁王に輝いたオールスター選手が君臨していました。しかし、レイエスがマーリンズへ移籍した後は機動力を失い、メッツは新しいスピードスターを探していたのです。そんな折、元オリックスのテリー・コリンズ監督の目に止まったのが、ロッキーズでくすぶっていたヤング・ジュニアでした。その結果、コリンズ監督の積極的な起用によって、ヤング・ジュニアの盗塁数は劇的に増加。今年前半、ロッキーズで8盗塁だったのが、移籍後のメッツでは36盗塁と走りまくり、合わせて44盗塁で初のタイトル奪取となったのです。オールスター後に記録した28盗塁は、今年メジャー1位の数字。来年も同じようなペースで1年間通すことができれば、2年連続のタイトル獲得も十分可能でしょう。

 来年はどんな選手が初の栄光を掴んでくれるのでしょうか。次々と新たなスターが生まれる瞬間も、メジャーリーグの魅力だと思います。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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