MLB個人タイトル2013「初栄光の男たち」 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 次にスポットを当てたい選手は、ナ・リーグで首位打者に輝いたコロラド・ロッキーズのマイケル・カダイアー(打率.331・20本塁打・85打点/34歳)です。カダイアーの出身は、アメリカ東部バージニア州ノーフォーク。ノーフォークといえば、ニューヨーク・メッツのデビッド・ライトや、ブレーブスのアップトン兄弟(B.J.アップトン&ジャスティン・アップトン)など、ドラフト1巡目で指名された若手スターを次々と輩出した土地です。カダイアーも高校時代から全米屈指のスラッガーとして名を馳せ、1997年のドラフト1巡目全体9位でツインズに入団しました。

 実はカダイアーがプロ入りした直後、フロリダの野球アカデミーで彼のプレイを見たことがあります。周囲の野球関係者が「彼こそ将来のスーパースターだ」と大絶賛していました。そして4年後の2001年、カダイアーは順調に成長してメジャーデビュー。毎年地区優勝争いを演じていた全盛期のツインズの主力として活躍します。しかし、平均して打率.280・20本塁打・80打点前後をコンスタントに残す中距離ヒッターなので、2012年のロッキーズ移籍後も個人タイトルとは無縁でした。

 ところが今年、カダイアーは驚異的な飛躍を遂げたのです。5月28日から6月30日にかけて自己最多の27試合連続安打を記録し、レギュラーシーズン終盤の9月にも20試合で打率.385をマーク。メジャー12年間で一度も打率3割を打ったことがなかったにもかかわらず(過去最高打率は.285)、今年はなんと打率.331を記録して初の首位打者に輝きました。ロッキーズでは過去、アンドレス・ガララーガ(1993年)やラリー・ウォーカー(1998年、1999年、2001年)、トッド・ヘルトン(2000年)など錚々たるメンバーが首位打者に輝いており、カダイアーの受賞は球団史上6人目の快挙となります。

 ロッキーズの本拠地クアーズフィールドは打球が飛びやすいため、「打者有利の球場」と言われています。ただ、カダイアーの場合は、その環境だけの恩恵でタイトルを獲れたのではありません。たしかにロッキーズの選手は、ホームとロードで打率1割以上差のある例も少なくありません。しかしカダイアーは、ホームで打率.356に対し、ロードでも打率.311を残しており、決して内弁慶ではないのです。きっと来年もロッキーズの主軸として大いに活躍してくれると思います。

 続いて注目してもらいたい選手は、ナ・リーグのホームランキングに輝いたピッツバーグ・パイレーツのペドロ・アルバレス(打率。233・36本塁打・100打点/26歳)でしょう。アルバレスは2008年にドラフト1巡目全体2位でパイレーツに入団したスーパーエリートです。タンパベイ・レイズのデイビッド・プライスを輩出した大学野球界の名門・ヴァンダービルト大出身で、大学記録となる通算49本塁打をマークするなど、当時からホームランバッターとして有名な存在でした。そして入団時には、当時の球団史上最高額となる契約金600万ドル(約6億6000万円・当時)でプロ入り。1985年のバリー・ボンズ以来となる「パイレーツ史上最高のドラフト指名選手」としてファンの期待を一身に集めました。

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