MLB個人タイトル2013「初栄光の男たち」
2013年シーズンも目新しい選手が数多く誕生し、メジャーリーグを大いに盛り上げてくれました。特に個人成績を見てみると、意外と知られていない選手がタイトルを手にしています。そこで今回は、初の栄冠に輝いた選手たちにスポットを当てたいと思います。
パイレーツで40年ぶりのホームランキングに輝いたのが26歳のペドロ・アルバレスだ まず、ア・リーグで紹介したいのは、最優秀防御率のタイトルを手にしたデトロイト・タイガースのアニバル・サンチェス(14勝8敗・防御率2.57/29歳)です。ベネズエラ出身のサンチェスがメジャーリーグのチームと契約したのは2001年。初めて入団したチームは、現在リーグチャンピオンシップで対戦しているボストン・レッドソックスでした。しかし2005年オフ、レッドソックスはフロリダ(現マイアミ)・マーリンズのジョシュ・ベケットを獲得するために、ハンリー・ラミレス(ロサンゼルス・ドジャース)らとともにサンチェスを交換トレードで放出したのです。しかも当初、マーリンズが要求したのはサンチェスではなく、現在レッドソックスのエースとして活躍しているジョン・レスターでした。
しかし、サンチェスはそんな屈辱を晴らすべく、メジャーデビューを果たした2006年、いきなり10勝3敗のふたケタ勝利をマーク。その年の9月6日、アリゾナ・ダイヤモンドバックス戦ではノーヒットノーランを達成しました。ただ、所属するマーリンズは下位を低迷し、優勝を狙えるチームではありません。その後は活躍のわりに勝ち星に恵まれず、2012年も6月まで5勝7敗・防御率3.94。戦力の乏しいチーム事情の中、サンチェスは苦しい戦いを強いられていました。そんな中、サンチェスの能力を高く買ったのが、ア・リーグ中地区で地区優勝争いを演じていたタイガースです。即戦力になると確信したタイガースはさっそくトレードを打診し、ジャスティン・バーランダーとマックス・シャーザーに次ぐ先発3番手に抜擢。また、その年のオフには5年総額8000万ドル(約67億2000万円)という大型契約でサンチェスを引き止めました。
そんな期待に応えるべく迎えた2013年、ついにサンチェスは大ブレイクを果たしたのです。4月26日のアトランタ・ブレーブス戦では球団記録となる1試合17奪三振をマークし、さらに5月24日のミネソタ・ツインズ戦では9回1アウトまで無安打ピッチング。自身2度目のノーヒッターになるかという快投を演じました。そして何より注目すべきは、サンチェスがリーグ6位となるシーズン202奪三振を記録した点です。タイガースに移籍した昨年は1試合平均6.80個の奪三振でしたが、今年はア・リーグ3位の平均9.99個をマーク。一気に奪三振投手へと変貌を遂げたのです。これにより、タイガースはシャーザー(リーグ2位の240個)、バーランダー(同4位の217個)とともに「200奪三振トリオ」を形成。トレート、カーブ、スライダー、チェンジアップと4つの球種を武器に三振の山を築き、サンチェスは見事、最優秀防御率のタイトルを獲得しました。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)