数字が語る「上原浩治はポストシーズンに強い」

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 そしてもうひとつ、目に止まったポイントは、上原投手が何度か2イニングにまたがって投げている点です。現代のメジャーでは、1イニング限定で投げるクローザーが多くを占めています。しかし、上原投手は最近でも3回ほど、1イニング以上投げているケースがありました。8月24日のロサンゼルス・ドジャース戦、8月30日のシカゴ・ホワイトソックス戦、そして9月10日のタンパベイ・レイズ戦です。いずれも8回ツーアウトの場面から登場し、すべてセーブを記録しました。特にレイズ戦では、8回ツーアウトから4人の打者をわずか13球で仕留め、そのうち12球がストライクでした。

 1イニング以上投げられる上原投手の存在は、今後の戦いでこそ貴重になってくるでしょう。短期決戦のポストシーズンでは、レギュラーシーズンに比べて先発投手を早めに降板させ、次々とピッチャーを継投していきます。そうなると、自然とリリーフへの負担は大きくなります。その結果、クローザーである上原投手を9回より前に登板させないといけないシーンも十分にあるからです。ヤンキースが長年に渡ってポストシーズンで結果を残してきたのは、1イニング以上投げられるマリアノ・リベラという存在がいたからです。レッドソックスのようにワールドチャンピオンを狙うチームにとって、上原投手は最もふさわしいクローザーだと思います。しかも、上原投手の9月、10月の通算成績を見てみると、47試合に登板して67個の三振を奪い、与えたフォアボールは1個のみ。とんでもない数字を残しているのです。いかに上原投手がシーズン終盤に強いかを証明するデータと言えるでしょう。今後、上原投手がどんなピッチングを披露してくれるのか、非常に楽しみです。

※9月18日現在

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る