9月に大逆転の予感。ワイルドカード争いは、このチームに要注意 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 その投手陣を支えているのは、昨年12月にレイズから移籍してきたジェームズ・シールズと、ドミニカ共和国出身のアービン・サンタナです。9月はスケジュール的に休みが多いので、絶好調の彼らふたりをフル回転させれば、夢の大逆転劇もあるのではないでしょうか。もし、ワイルドカードに食い込むことができれば、1985年に初の世界一となって以来のプレイオフ進出となります。あまり日本では注目されていないチームですが、ぜひロイヤルズの動向もチェックしてください。

 対するナ・リーグで気になるチームは、ワシントン・ナショナルズ(71勝68敗/東地区2位)と、アリゾナ・ダイヤモンドバックス(71勝68敗/西地区2位)です。8月末の段階で東地区首位のブレーブスに15ゲーム差をつけられたナショナルズは、さすがに地区優勝はできないでしょう。また、プレイオフに進出できるワイルドカードも、首位のシンシナティ・レッズと7.5ゲーム差。決して簡単に追い上げられる差ではありません。

 ただ、ナショナルズに期待している理由は、若きエースのスティーブン・ストラスバーグの存在です。昨シーズンはひじの手術後ということもあり、投球回数が制限されて、9月7日にシーズンを終えました。しかし、今シーズンは足かせがなくなったので、9月も先発ローテーションの軸として投げまくってくれることでしょう。しかもここ5試合、ストラスバーグが先発した試合は4勝1敗と絶好調。また、チームを率いるデーブ・ジョンソン監督が今年限りで勇退するので、彼のためにもチーム一丸となっているようです。今シーズンのナショナルズは常に勝率5割前後をキープする安定した戦いを見せているので、アメリカの報道でも非常に注目されています。

 そして、8月末の段階で西地区首位のロサンゼルス・ドジャースに10.5ゲーム差をつけられたダイヤモンドバックスは、ワイルドカード首位のシンシナティ・レッズと6ゲーム差。しかし、投打ともに若手が勢いに乗っているので、もしかしたら奇跡の大逆転劇を生み出すかもしれません。「投」の主役は、24歳の左腕パトリック・コービンです。メジャー2年目の今年、すでに13勝を記録しており、オールスターにも選出されました。そして一方、「打」の主役といえば、今年大ブレイクしたポール・ゴールドシュミットでしょう。現在、31本塁打はトップと1本差の2位、そして106打点は堂々の1位をマークしています。今年のナ・リーグMVP候補のひとりに挙がっているゴールドシュミットが爆発すれば、プレイオフも見えてくるはずです。

 ア・リーグ、ナ・リーグともに、今年はいったいどのチームが怒涛の快進撃を見せてくれるのでしょうか。2011年のカージナルスのような、「ミラクル誕生」に期待したいと思います。9月以降のワイルドカード争いから目が離せません。

※カッコ内のチーム成績は9月5日現在

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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