日米に見る投手育成法の違い。「投げ込み」は必要か? (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 先日、米国の人気スポーツ雑誌『ESPNマガジン』は、日本の恒例行事である『夏の甲子園』開幕前に特集を組んだ。済美高校の安樂智大が春のセンバツで計772球を投げたことを紹介し、日本の高校生の球数問題をテーマに上げた。1998年の夏に当時・横浜高校のエースだった松坂大輔(メッツ)が計767球を投げたことにも触れ、「NAGEKOMI(投げ込み)」という日本独特の練習方法、すなわち米国にない野球文化を伝えていた。高校生に多くの球数を投げさすのは危険という論調だったが、その一方で、現在カリフォルニアでジュニア選手の育成に力を注いでいる元メジャーリーガーの長谷川滋利氏が、投げ込みについてこんな話をしてくれた。

「日本の投げ過ぎは問題があると思いますが、米国の投げなさ過ぎも決して良くはない。アメリカではリトルリーグに始まり大学野球まで球数制限があります。でも、基本的に試合数が少ないので投手は肩、ヒジの強度が足りない。メジャーで投げる力を持っていても、(中4日の)スケジュールの中で投げれば壊れても仕方がないと思います」

 また、日米でプレイ経験のある吉井理人氏も同様に語る。

「いくら大事に育てたとしても、ケガをする時はします。肩やヒジというのは、何球以内に抑えたからといって、故障しないとは限らない。特にピッチャーは、試合で投げて初めていろんなことを経験し、多くのことを学びます。『投げさせない=大事に育てる』ではないと思います」

 米国では肩やヒジは消耗品であり、「投げ過ぎはダメ」の考え方で凝り固まっているが、「鍛え方が足りないのでは?」という事例が多々出てきているのも事実。米国は野球の先進国であることは疑いようのないことだが、常に正しいとは限らない。投手育成法をもう一度考え直す必要があると強く感じる。

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