MLB新人王争い、ヒートアップ。噂のキューバ人が大ブレイク!

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 この対決からも分かるように、フェルナンデスの武器は、100マイル(時速約161キロ)近い剛速球と、キレのあるカーブです。背番号16を背負い、ストレートとカーブで勝負に挑む姿は、元メッツのドワイト・グッデンを彷彿とさせます。大ブレイクしたプイグとともに、ふたりのキューバ人ルーキーから目が離せません。

 一方、ア・リーグの新人王争いにも、面白い選手がシーズン途中から現れました。タンパベイ・レイズに所属するウィル・マイヤーズという22歳の外野手です。2009年にドラフト3順目でカンザスシティ・ロイヤルズから指名されたマイヤーズは、2012年にダブルAとトリプルAで合わせて打率.314・37本塁打・109打点という圧倒的な数字を残し、アメリカ随一の野球専門誌『ベースボール・アメリカ』が選出するマイナーリーグ最優秀選手に輝いた逸材です。しかし昨年12月、ロイヤルズは6年連続ふたケタ勝利投手のジェームズ・シールズを獲得するために、トレード要員としてマイヤーズをレイズに放出したのです。

 今シーズン、マイヤーズはマイナーで開幕を迎えたものの、6月18日にメジャーデビュー。背番号9を背負い、6番・ライトでデビューしたのですが、それがちょっとした話題となりました。その試合は敵地ボストンでのレッドソックス戦だったのですが、74年前の1939年、背番号9を背負って6番・ライトでデビューしたのが、レッドソックスが生んだ「打撃の神様」こと、テッド・ウィリアムズだったのです。そんな偉大な選手と同じシチュエーションに、メディアは大いに盛り上がりました。

 そんな期待に応えるべく、マイヤーズはメジャーデビュー最初の55試合で、64安打・9本塁打・39打点という素晴らしい成績を残しました。この数字に匹敵する好成績を残したのは、1986年のウォーリー・ジョイナー(当時カリフォルニア・エンゼルス)や、2001年のアルバート・プホルス(当時セントルイス・カージナルス)など、メジャーの過去50年間で6人しかいません。この大活躍により、マイヤーズは一躍、ア・リーグ新人王争いに食い込んできたのです。

 また、注目すべきは、前述のプイグと同じように、マイヤーズのメジャー昇格後、チームの快進撃が始まった点です。ア・リーグ東地区に所属するレイズは、6月22日時点では38勝37敗、首位から6ゲーム差の最下位に甘んじていました。しかしその後、32試合で26勝6敗という驚異的な追い上げを見せ、ついに7月30日、64勝43敗で首位の座を奪い取ったのです。現在、マイヤーズの成績は、打率.286・9本塁打・39打点。新人王を受賞する可能性は十分あるでしょう。

 新人王レースの投票を左右するのは、やはりシーズン後半の活躍ぶりです。今回取り上げた3名は、どの選手も強烈なインパクトを残しています。この中から新人王となる選手は出てくるのでしょうか。レギュラーシーズンも残り1ヵ月、今年の新人王争いはさらに激化しそうです。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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