MLB新人王争い、ヒートアップ。噂のキューバ人が大ブレイク! (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 一方、ナ・リーグの新人王レースにおいて、「打」の最有力候補がプイグならば、「投」の主役に躍り出たのが、マイアミ・マーリンズに所属するホセ・フェルナンデスです。奇しくもプイグと同じキューバ出身で、年齢は21歳になったばかり。フェルナンデスもキューバから亡命してメジャーリーガーとなりましたが、そこに行き着くまでのストーリーは実に壮絶なものです。

 キューバからの亡命に3度失敗したフェルナンデスは、2008年、母と妹を連れてボートで4度目の脱出を試みました。しかしその途中、荒波に母親がさらわれて海に放り出されるという危機に。当時15歳のフェルナンデスはすぐさま海に飛び込んで母親を救出し、生死をさまよった末にアメリカへの亡命に成功したのです。そして亡命後、フェルナンデスは進学先の地元高校でピッチャーとしての才能を開花させ、2011年、マーリンズのドラフト1巡目全体14位で入団。数々の苦難を乗り越えて、晴れてプロ入りを果たしたのでした。

 2012年はマイナーで過ごしましたが、2013年4月7日、フェルナンデスはついにメジャーへと昇格。ただ、先発の柱として期待されるものの、最初の5試合は勝ち星なく苦戦を強いられました。しかし5月4日、フィラデルフィア・フィリーズ戦で初勝利を飾ると、そこから一気に大ブレイク。次々と勝ち星を積み重ね、ついにはオールスターゲームにも初選出されたのです。そしてオールスターでは、昨年の三冠王ミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)を内野フライ、さらに現在ホームラン数トップのクリス・デイビス(ボルチモア・オリオールズ)を三振に切るなど、見事なピッチングで1回を無失点に抑えました。

 現在、フェルナンデスは26試合に先発して10勝6敗。クレイトン・カーショウ(ドジャース)、マット・ハービー(ニューヨーク・メッツ)に次ぐメジャー3位の防御率2.33を記録しています。新人のシーズン最初の25先発で、「ふたケタ勝利&防御率2.50以下」という成績を残したのは、過去25年間のメジャーの歴史において、1995年の野茂英雄(当時ドジャース)、2010年のハイミー・ガルシア(セントルイス・カージナルス)に次ぐ3人目の快挙です。

 また、シーズン後半に入ってもフェルナンデスの勢いは止まらず、ここ10試合の先発は5勝2・防御率1.77の好成績。シーズン後半の奪三振数を見ると、メジャー全体1位はダルビッシュ有投手(テキサス・レンジャーズ)の68個、そして2位がフェルナンデスの62個となっています。さらに7月下旬から8月頭にかけて、2試合続けて13個以上の三振を奪う力投。全米中を騒がせているダルビッシュ投手と引けを取らない奪三振ショーを披露しています。

 そして8月19日には、面白い対決がありました。フェルナンデスとプイグが初めて対決したのです。話題のキューバ人ルーキーの激突とあって、アメリカメディアはこぞって注目しました。まず第1打席は、フェルナンデスが97マイル、99マイル、98マイルと立て続けに剛速球を投げ、最後はカーブでプイグをファウルフライに。そして第2打席もカーブでショートゴロに打ち取り、フェルナンデスがプイグを2打数ノーヒットに抑えました。

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