324日ぶりのメジャーマウンド。松坂大輔が直面した「4マイルの溝」 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 直球系(フォーシーム、ツーシーム)の最速は91マイル(約145キロ)だったが、その球速をマークしたのはわずかに2球。平均球速は88マイル(約140キロ)だった。レッドソックス時代の2007年に15勝、2008年に18勝を挙げた当時のアベレージは92マイル(約147キロ)であったことを考えれば、球速は4マイルほど少ない。

 また、スライダーに関しても同様のことが言える。タイガース戦で松坂が投じたスライダーが80マイル(約128キロ)を超えたのは18球中5球だけ。レッドソックス時代の平均は82マイル(約131キロ)だったが、この日の平均は78マイル(約124キロ)。そしてカットボールも同様だ。この球種はメジャーでの松坂を支えてきたボールだが、レッドソックスにいた頃の平均は91マイル(約145キロ)だったが、これも今回は87マイル(約139キロ)になっていた。いずれの球種も平均で4マイルほどスピードが足りない。

 松坂自身、現状について自分が一番よくわかっている。その中で何ができるかを考え、メジャーのマウンドに帰ってきたはずだ。

 失点したのは1回と2回だけ。3回から5回は、縦の緩いカーブを混ぜながら、ストライクゾーンの中でボールを動かすなど、配球と投球術でいずれも打者3人ずつで退けた。本人の思い描く投球ではないが、かわしのテクニックで勝負せざるを得ない。

 だが、松坂はまだ32歳。9月に33歳を迎えるが、過去の球速が期待できない年齢ではない。球速減は相次ぐ故障からの復帰過程と見るべきだ。

 戦いの場をメジャーに戻せたことでの効果は確実にある。『4マイルの溝』は投げ続けて行くことで埋まると信じている。本当の勝負は2014年だ。

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