「MVP級の活躍」。上原浩治&田澤純一が絶賛される本当の理由

  • 佐藤直子●文 text by Sato Naoko
  • photo by AP/AFLO

 今季レッドソックスは17選手が延べ22回故障者リスト入りしている(現地時間8月19日現在)。その中でも、開幕以来怪我なしで大車輪の働きを見せているのが、上原浩治&田澤純一の日本人コンビだ。09年のメジャー移籍以来、毎年のように故障者リスト入りしていた上原だが、「去年ケガをして以来の調整法と、オフの過ごし方が合っている」という本人の言葉通り、今季は故障者リストとは無縁の生活。5年目にして初めて開幕メジャーとなった田澤も、強打者や好打者を前に頭を悩ませながらも、ブルペンに欠かせない存在となった。

 ふたりの貢献度の大きさを、最もよく知る人物がいる。ニエベス投手コーチだ。「ブルペン陣の中で、シーズン開幕メンバーで残っているのは、コウジ(上原)とタズ(田澤)だけじゃないかな。ふたりはとにかくよく働いてくれる。現時点でMVPを選ぶように言われたら、真っ先にふたりの名前を挙げるよ」と、満面の笑みで即答した。8月19日現在、上原は56試合、田澤は57試合で登板。チームは127試合を消化したところだから、単純に2.5試合に1度くらいの割合で登板している計算になる。田澤→上原のリレーも珍しくなく、勝利の方程式の必須項目だ。

 現時点では、上原に次ぐブルペンNo.2の男と言われる田澤だが、レッドソックス球団内で彼の成長ぶりを驚く人物は少ないだろう。チームを支える戦力になることは分かっていたからこそ、2009年に契約したわけだ。メジャー契約とはいえ、マイナーで鍛え上げられた。手術も経験しながら、心身ともに成長を経て、実力で今の立場を勝ち取った。ニエベス投手コーチは、「タズの未来は限りなく広く、そして明るい」と太鼓判を押す。投手コーチ時代を含め、誰よりも田澤の成長を知るファレル監督も「四球を滅多に出さないところがいい。終盤には欠かせない投手。今季の貢献度は計り知れない」と、全幅の信頼を寄せている。

 6月21日に今季4人目のクローザーに指名されて以来、上原の活躍は神懸かっている。もちろん、開幕から目を見張る安定感があったからこそ、クローザーに指名されたわけだが、7月9日から16試合で登板し、18回1/3にわたり1点たりとも失点を許していない。軸となる球は、88、89マイルのフォーシームと落差のあるフォーク。それでも打者が打ちあぐねてしまうのは、どちらも非常に高い精度のボールだからだ。

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