メジャーのトレードに学ぶ「将来性の値段」 (2ページ目)

  • 佐藤直子●文 text by Sato Noko
  • photo by Getty Images

 この時期のトレードは、プレイオフ進出を目指すチームの即戦力補強が主な目的だ。今季は成績が低迷し、すでに来季に目を向けたチームから、好成績のベテラン選手を獲得する。即戦力を獲得したチームは、代償として有望株を手放すのが一般的だ。例えば、カブスから先発マット・ガーザ(30歳)を獲得したレンジャーズは、有望株の先発投手ジャスティン・グリム(25歳)と野手マイク・オルト(25歳)に加え、若手3選手を手放した。実績あるベテランひとりに対し、将来を見据えた若手5人という価値計算だ。

 もちろん、「誰が欲しい」「誰は手放せない」というGM間の交渉は、一筋縄ではいかない。互いの腹を探り合いながら、自分たちに有利な交渉を進めたい。そのためには、GMやスカウトたちが、相手チームの戦力を正確に把握し、分析していることが求められる。「有望株」という看板に偽りはないか。現在の評価は低いが、環境が変われば開花するかもしれない原石は転がっていないか。トレードに関わったGMやスカウトら首脳陣らの選定眼が正しいか否か、その評価が決まるのは若手の行く末次第。少なくとも数年後、ということになるだろう。

 そこで、過去のトレードがどんな顛末となったのか、いくつか実例を見てみたい。

 2009年7月31日、宿敵ヤンキースに地区優勝をさらわれないよう、レッドソックスが打線の補強に踏み切った。インディアンスから捕手のビクター・マルチネス(移籍当時30歳)を獲得。一塁手も兼任できる両打ちの好打者を手に入れたレッドソックスは、地区優勝は逃したがワイルドカードでプレイオフ進出。だが、プレイオフは地区シリーズでエンゼルスに3連敗し、シーズンを終えた。マルチネスは10年オフにタイガースへFA移籍したが、レッドソックス所属時は、通算打率3割1分3厘、28本塁打、120打点と貢献した。

 そのマルチネスと交換でインディアンスに移籍したのが、現エースのジャスティン・マスターソン(同24歳)ほか2選手だった。09、10年こそ奮わなかったが、11年から今季まで3季連続2ケタ勝利をマーク。今年はすでに3度も完封勝ちして、オールスターにも選ばれた。今後も先発ローテーションを支えることは間違いないが、現時点では、ほぼ平等なトレードだったと言えるだろう。

 日本人選手が関係したトレードと言えば、2011年7月30日、悲願の世界一を果たすためにブルペン強化を急務としたレンジャーズが、当時オリオールズ所属だった上原浩治(同36歳/現レッドソックス)を獲得したのも記憶に新しい。

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