オールスター辞退も、選手間投票で選出されたダルビッシュ有の評価 (2ページ目)

  • 佐藤直子●文 text by Sato Naoko
  • photo by Getty images

 今年の春先に「去年は"お客さん"って感じだったけど、今年は受け入れられている感覚がある」と、ダルビッシュが言ったことがある。どうして受け入れられたか。それは、仲間が向ける厳しい評価の目を満足させられたからだ。昨季中旬に大きなスランプを迎え、もがき苦しむ日々を送ったが、そこで沈まなかった。8月中旬から復調し、9月は5試合を3勝無敗と力強くシーズン終了。話題だけの男じゃないと、知らしめた。

 昨季45年ぶりに三冠王を達成したカブレラは、ダルビッシュが対戦を楽しむ打者のひとりだ。今季もまた、2年連続三冠王達成も夢ではない順調なシーズンを送っているが、そのカブレラから見て、「今年のダルビッシュは落ち着きが出てきた」という。

「もともと素晴らしいボールを投げる投手だ。スライダーだったり、スローカーブだったり、速めのカーブだったり。あれだけ多彩な変化球を持つピッチャーは珍しい。それだけでも打者と対戦する時にアドバンテージになるけれど、今年はそこに落ち着きが加わった。おそらく、アメリカの野球を1年経験して、打者に対する知識が増したことが、大きな自信になっているんじゃないかな」

 ちなみに、今年5月16日に対戦した時の第3打席で、カブレラは時速61マイル(約98キロ)のスローカーブを大きく空振りして苦笑いする一幕があった。現時点で、61マイルは今季ダルビッシュが投げたカーブの中でも、最も遅い球速でもある。当代きっての好打者カブレラを迎えても、真剣勝負の中に遊び心を交えた配球ができるようになったのは、やはり落ち着きと自信の表れだろう。空振りした後に大きくバランスを崩して、球場をどよめかせてしまったカブレラだが、「いやぁ、あの落差にやられたよ。あれは完全に崩された」と、思い出し笑いをしながらも、潔(いさぎよ)く脱帽していた。

「まぁ、あれだけ派手な前ぶれで登場したけど、その宣伝文句に間違いはなかったな」と言うのは、ア・リーグ西地区のライバル球団アスレチックスで守護神を務めるグラント・バルフォアだ。

「同じ投手として、あんなにたくさんの球種が投げられるのはうらやましい限りだ。しかも、投げられるだけじゃなくて、どの球種も質が高い。2年目は打者に研究されて沈んでいく投手もいるけど、自分の投球を貫いている。調子が悪い時でも、試合を作れることが成長の証じゃないかな」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る