野茂英雄以来の衝撃?ニューヨーク・メッツから「超豪腕」現る (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 一方、ニューヨークと対極に位置する西海岸でも、ある若手ピッチャーが話題となっています。それは、ロサンゼルス・ドジャースからメジャーデビューを果たした新人の柳賢振(リュ・ヒョンジン)です。ご存知の通り、韓国プロ野球界の奪三振王として名を馳せ、2009年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でも活躍した左腕は、昨年オフに韓国のハンファ・イーグルスからポスティングシステムでドジャースに移籍。6年総額3600万ドル(約30億円)の大型契約は、日本でも話題となりました。

 開幕前、ドジャースはサイ・ヤング賞投手のザック・グレインキーを6年総額1億4700万ドル(約120億円)で獲得し、一時は8人もの先発要員を抱えるほどの超強力先発陣を形成しました。しかし、開幕早々に期待のグレインキーが乱闘で左鎖骨を骨折して離脱、さらに6年連続ふたケタ勝利投手のチャド・ビリングズリーもトミー・ジョン手術で今シーズン絶望。気がつけば、先発陣は3人ほどしか残っていない状況となってしまいました。そんな中、予想以上の活躍を見せたのが、新人の柳賢振です。

 4月7日のピッツバーグ・パイレーツ戦に先発した柳賢振は、6イニング3分の1を投げて3安打2失点の好投で初勝利。さらに、4月30日のコロラド・ロッキーズ戦では6イニングで12奪三振を奪い、1995年に野茂投手が記録した1試合16奪三振や14奪三振に次ぐ、チーム新人奪三振数(1試合12個)をマークしました。その結果、4月の柳賢振の成績は、6試合の先発で3勝1敗・防御率3.35。その中でも注目すべきは、奪三振数です。合計37イニング3分の2を投げて、46個もの奪三振を記録。1試合平均10.99個の奪三振率は、パイレーツのA.J.バーネット、シカゴ・カブスのジェフ・サマージャに次ぐナ・リーグ3位の高い数字なのです。

 この勢いで三振を奪い続ければ、野茂投手が作った球団新人記録の236奪三振を上回る可能性も十分にあります(注:1995年はストライキのため144試合)。ア・リーグではダルビッシュ有投手(テキサス・レンジャーズ)が三振を量産しているので、もしかしたら今シーズン、両リーグでアジア出身選手の奪三振王が誕生するかもしれません。現在、柳賢振の先発ポジションは2番手。エースのクレイトン・カーショウに次ぐ地位を確保しました。ロサンゼルスでは今、開幕時の苦しい時期に突如現れた救世主・柳賢振の話題で持ちきりです。日本ではあまり報道されていませんが、この韓国人メジャーリーガーにもぜひ注目してください。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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