【MLB】黒田博樹、完封よりも評価されるべき「隠れた金字塔」

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty images

 そして、黒田にはもうひとつ譲れない不変のスタイルがある。黒田の今季開幕戦となった4月3日のレッドソックス戦。シェーン・ビクトリーノが放ったピッチャー返しのライナーに右手を差し出し、中指を打撲してしまった。投手として、この行為が良いのか、悪いのか。少なくとも褒めてくれる者はほとんどいないだろう。結果、自身最短となる1回1/3で降板となった。

「ケガなく1年間ローテーションを守る」ことを信条とする黒田にしてみれば、自ら定めた掟(おきて)に反する行為でもあるが、「手を出したことは、もしそれが原因で投げられなくなっても仕方ないと思ってやっている」と語るように、闘志を前面に押し出す投球も黒田の不変のスタイルだ。

 150試合目の先発を終え、黒田が残したメジャー通算防御率は3.41。これは野茂の3.82を上回る数字だが、黒田自身がこの結果に満足することは決してない。

「100球投げたら、100球とも自分の思ったところに投げたいんで。それを考えれば、まだまだ」

 ヤンキースは主力にケガ人が続出している上に高齢化が進み、今シーズンの下馬評は高くない。その中で、右の大黒柱として責任を背負う黒田も38歳。あらためて目標を問うと、黒田はこう答えた。

「まずはケガをしないように、年齢も年齢なんで。そこがいちばんだと思います。でも、ケガばっかりは、手を出してしまったりするんでね(笑)。防ぎようがない部分もありますけど、極力、ケガをせずに1年間ローテーションを守りたいと思います」

 無事これ名馬。"Hard Worker"も"Consistency"も健康を保ってこそ生まれるパフォーマンス。黒田にはケガなく、1年間ヤンキースのマウンドを守り続けて欲しい。

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