【MLB】「脱イチロー」で生まれ変わったマリナーズに注目せよ!

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 かねてからマリナーズは、投打のバランスの悪さを指摘されていました。本拠地セーフコフィールドでの昨年の成績を見ても、球団記録となるチーム防御率2.96をマークしたにもかかわらず、得点数はメジャー最低の1試合平均わずか3.17点。ピッチングは良くてもバッティングがダメという、非常にバランスの悪いチームだったのです。

 それを是正するため、今年、マリナーズは方向転換を図りました。セーフコフィールドの外野フェンスをホームベースに近づけ、イチロー時代のスピード重視から、パワー重視へとシフトチェンジしたのです。その一環として、今オフにはワシントン・ナショナルズで素質を開花させた強打のマイク・モース(打率.291・18本塁打・62打点)を獲得。さらに、ロサンゼルス・エンゼルスからスイッチヒッターのケンドリス・モラレス(打率.273・22本塁打・73打点)も加え、打撃陣のパワー面を強化しました。

 その甲斐あって、オープン戦でのマリナーズは、33試合でホームラン58本をマーク。この数字は、メジャー30球団中トップでした。たしかに空気の乾いているアリゾナのキャンプ地は、ホームランがより出やすい環境です。フロリダでキャンプを張るチームと多少環境は違いますが、強力打線を誇るヤンキースとレッドソックスの合計したホームラン数(40本)と比較しても、やはりマリナーズの破壊力は増したと言えるのではないでしょうか。

 オープン戦では球団記録となる22勝(11敗)を挙げ、早くもパワー重視に方向転換した効果が出ていたと思います。これまで貧打に泣かされ続けたチームだけに、今年は打線の援護によって岩隈久志投手(9勝5敗・防御率3.16)が救われるケースも増えるかもしれません。今シーズンはヒューストン・アストロズがナ・リーグから移動し、西地区は新しく生まれ変わります。強豪ぞろいの中、マリナーズの掲げる『脱イチロー』のチームカラーが成功するのかどうか、非常に楽しみです。

※カッコ内は昨シーズンの成績

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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