【MLB】「伝説の守護神」M・リベラのラストシーズンを見逃すな! (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 リベラは昨年までの18年間で17度プレイオフに進出し、5度のワールドシリーズ制覇に貢献しました。1990年代後半からのヤンキース黄金時代は、リベラなくして語れないでしょう。しかし一方、プレイオフで負けたときは、彼が打たれたときでもあるのです。上記の思い出でも分かるように、良くも悪くもヤンキースの世界一制覇は、リベラが握っていたと言っても過言ではないでしょう。名門ヤンキースで休むことなく投げ続け、大きなプレッシャーを背負いつつ、そして結果を残したクローザーは、リベラ以外に存在しません。

 さらに、リベラを語る上で外せないのが、『背番号』の話でしょう。1997年、『近代野球初の黒人メジャーリーガー』ジャッキー・ロビンソンのメジャーデビュー50周年を祝って、全球団が彼の背番号42番を永久欠番にしました。当時、リベラを含む背番号42番の選手は「チームを移籍するまで変更しなくてOK」という規定となりましたが、わずか数年で42番はほとんど消えていきました。あれから16年経って、今も42番を付けているのはリベラだけ。これはすごいことです。リベラの背番号42番は、ダブル永久欠番となるでしょう。セントルイス・カージナルスは、通算300セーブを挙げたブルース・スーターの42番を永久欠番にしているので、将来、これと同じ扱いになるはずです。

 また、クローザーがマウンドに上がる前に流れるオリジナルの入場テーマ曲も、リベラによってメジャーになったと思います。かつて、荒れ球で人気を博したクローザーのミッチ・ウィリアムス(当時フィラデルフィア・フィリーズ)は、入場時に映画『メジャーリーグ』のテーマ曲『ワイルドシング』を使用していました。その後、リベラがヘビーメタルバンド『メタリカ』の名曲、『エンターサンドマン』を入場テーマ曲として使用するようになると、多くのクローザーもマネするようになりました。クローザーの入場テーマ曲で人気ナンバー1は、もちろんリベラの曲です。本拠地ヤンキースタジアムにこの曲のイントロが流れると、「リベラが登場するぞ!」と、満員の観衆が沸き立ちます。

 昨年5月、試合前の練習で右ひざ十字じん帯を損傷し、残りシーズンを棒に振ったリベラ。2011年オフに「2012年での引退」をほのめかしていましたが、「ケガのまま終わるわけにはいかない」と、リベンジを誓って再び復帰しました。今年で43歳。ラストシーズンの夢は、ワールドシリーズを制覇して終わることでしょう。最終戦で登板し、最後のバッターをアウトにして引退するという、長いメジャーリーグ史上、誰も成し遂げたことのないシナリオを実現してもらいたいです。ぜひとも今年は、ヤンキースに頂点に立ってもらいたいと願っています。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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