【WBC】米ラウンドも開幕!現地メディアは大会をどう伝えているか (3ページ目)

  • 冷泉彰彦●文 text by Reizei Akihiko
  • photo by Getty Images

 中南米諸国の中で、特に今回はベネズエラの代表チームが、昨年のア・リーグ三冠王であるミゲル・カブレラ選手(デトロイト・タイガース)、ワールドシリーズMVPのパブロ・サンドバル選手(サンフランシスコ・ジャイアンツ=決勝進出の場合は開催地が地元)などバリバリの現役を並べ、まるでMLBのオールスターチームと見間違えるほどの顔ぶれを揃えた。先日亡くなった反米の「闘士」、チャベス大統領の「弔い合戦」というニュアンスも出てくれば、この戦力が「爆発」する可能性も相当にある。ドミニカやプエルトリコの戦力も侮りがたい。こうした動きを受けて、アメリカ国内ではスペイン語解説のテレビ放送だけはメジャーな「ESPNのスペイン語チャンネル」が放映権を取得している。

 そんな新しい要素が加わったにしても、肝心のUSAチームが「ダメ」では大会は盛り上がらない。かと言って、3月の開催とあって、スター選手の場合、本人、エージェント、所属球団が参加にそれほど乗り気ではない状況は変わっていない。そこでMLB機構としては、機構内部のVIPであるジョー・トーリ副会長(ヤンキース、ドジャースなどで監督を歴任)をチームUSAの監督に据えて「監督のスターパワー」で話題性とチームの士気向上を狙った格好だ。

 そのUSA、ハミルトンやダンなど「左の大砲」には早々に参加を断られているが、主軸のデビット・ライト(メッツ)をはじめ、右打者は相当な顔ぶれを揃えている。スタントンやブラウンといった長距離砲も脅威だが、私はアダム・ジョーンズ(ボルチモア・オリオールズ)と、フィリーズからレッドソックスに移籍したばかりのシェーン・ビクトリーノに注目したい。二人とも、「ここ一番」に強そうなキャラクターだからだ。特にビクトリーノは、ハワイ生まれで母親が日系人、ポルトガルや中国系の祖先も持っており、WBCは前回からの連続出場となる点で、カギを握る存在になる。

 何よりも昨年度サイ・ヤング賞のR.A.ディッキー投手(メッツからブルージェイズに移籍)を擁する先発投手陣は一流を揃えており、前回までの脆いチームとは一味違うかもしれない。

 そうは言っても、アメリカの野球ファンのWBCへの視線は冷ややかだ。MLB機構の「使命」を背負って指揮を取るトーリ監督は、そうしたムードを吹き飛ばすためにも「最低でも決勝戦には進出を」という思いを強く持っているに違いない。USAチームが、そんな「必死さ」を見せてくるか、まずはフェニックスラウンドでの戦いぶりに注目したい。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る