【MLB】トレーニングに野球漬け。メジャーリーガーの意外なシーズンオフ事情

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

ウインターリーグは母国に残した家族や親戚に自分のプレイを見てもらえる絶好の機会だウインターリーグは母国に残した家族や親戚に自分のプレイを見てもらえる絶好の機会だ 年が変わって2013年となり、2月中旬から下旬ごろに始まるキャンプインまで、メジャーリーガーはシーズンオフを各々過ごしています。しかしオフだからといって、数ヶ月もゆっくり休んでいるわけではありません。近年は、ほとんどの選手が想像を絶するような厳しいトレーニングに励んでいるのです。

 実は40年ほど前まで、オフのメジャーリーガーはあまりトレーニングを行なわず、むしろアルバイトに精を出していました。ビックリする話かもしれませんが、当時のメジャーリーガーの給料は安く、1970年の平均年棒は約2万9000ドル(約812万円・当時)。最低保障年俸も1万2000ドル(約336万円・当時)だったので、多くの選手はトレーニングそっちのけでアルバイトに明け暮れていたのです。また、彼らはオフの間に稼がなければならなかったので、2月になっても選手は6~7割のコンディションでキャンプインしていました。

 しかし、1976年のFA制度導入により年俸が高騰したことで、その状況は一変します。給料が増えたことでアルバイトをする必要もなくなり、選手はトレーニングに専念するようになりました。昨年のデータによると、メジャーリーガーの平均年棒は344万ドル(約2億7520万円)、最低年俸保障額も48万ドル(3840万円)です。もちろん貨幣価値の違いはありますが、40年前と比べて実に100倍以上も平均年棒は上がりました。よって今の選手は、キャンプインには100%の完璧な状態に仕上げてやってきます。特に野手は、キャンプインから1週間後にオープン戦が始まるので、中途半端なコンディションではとても臨めないからです。

 トレーニングする場所は、自宅や本拠地球場などいろいろありますが、近年、最も人気があるのが『トレーニング専用施設』です。1990年代、スポーツ選手のマネージメントなどを手がける『IMG』が、フロリダ州のブラデントンという町に『ベースボールアカデミー』を作りました。この専用施設が評判になったことで、さらに多くのメジャーリーガーが利用するようになったのです。僕もかつて、ベースボールアカデミーを訪れたことがあります。そのときはノマー・ガルシアパーラ(当時ボストン・レッドソックス)や、パット・バレル(当時フィラデルフィア・フィリーズ)など、30名ぐらいのメジャーリーガーが集まっていました。

 トレーニングメニューは朝8時から午後4時半まで、週1日休みのペースで、基本6週間のプログラムを行ないます。つまり、トレーニングは正月明け早々からスタートするので、まったくオフという雰囲気ではありません。その内容も非常に濃いもので、まるでシーズン中のようなハードなメニューを選手たちはこなしているのです。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る