【MLB】楽天入りするA・ジョーンズは、こんなにスゴい奴 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 僕もブレーブスの本拠地ターナーフィールドに訪れた際は、ずっとセンターを守るA・ジョーンズの守備ばかり見ていました。とにかくA・ジョーンズの守備位置は、非常に浅いのです。他球団のセンターを守る選手の位置と、明らかに違います。それだけ、後ろのスペースを空けていても大丈夫という自信があったのでしょう。実際、打球がA・ジョーンズの頭上を越えるシーンは、ほとんどありませんでした。打球に対して誰よりも早くスタートを切り、自慢の快足を生かして他の外野手では到底追いつけない打球までも、難なくキャッチするのです。当時のA・ジョーンズは、全米スポーツニュース番組で放送される好プレイ集の常連でした。

 しかし、2007年12月にFAとなって、ロサンゼルス・ドジャースと2年3620万ドル(当時・約41億円)の大型契約を結んだあたりから、歯車が狂い始めます。移籍1年目のシーズンに、極度のスランプに陥ったのです。2008年は打率.158・3本塁打・14打点という散々な成績に終わり、その結果、契約年数1年を残して退団を余儀なくされました。これまでスーパーエリートの道を歩んできたA・ジョーンズにとって、人生初の挫折です。

 その後、テキサス・レンジャース→シカゴ・ホワイトソックス→ヤンキースと転々とし、いつしかレギュラーの座から控えに甘んじ、出場機会も激減。突如、輝きを失ってしまいました。30代からの急激な落ち込みようは、今も信じられません。結局、メジャー17年間で通算434本塁打でしたが、順調に活躍していれば、軽く500本塁打は越えていた選手だと思います。現在、35歳――。決して老け込む年齢ではないと思います。

 ただ、これまで日本にやってきた助っ人外国人選手の中で、野球選手としての能力がナンバー1なのは間違いありません。よく、来日したメジャーリーガーを『通算本塁打数』で比較しますが、A・ジョーンズの場合はバッティングだけではなく、守備もメジャー随一でした。これだけ攻守にわたって活躍し、実績を残した選手は過去に例がありません。日本プロ野球界の歴史において、『史上最強のメジャーリーガー』です。

 はたして楽天では、どんなバッティングと守備を見せてくれるのでしょうか。全盛期よりスピードが落ちたと言っても、メイズと比較されるほどの選手。往年の守備も期待したいです。楽天に入団するA・ジョーンズは、ライトを希望しているとも聞いています。日本でも十分、メジャーの片鱗を見せてくれることでしょう。来シーズン、ホンモノのスーパースターのプレイが今から楽しみです。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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