【MLB】黒田博樹、年俸1500万ドルの価値とは? (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 しかも、1500万ドル以上の年俸をもらっている16人の顔ぶれを見てみると、近年、若い剛腕投手の台頭もあり、割と30歳前後の先発投手が多いのです。前述したサンタナは33歳、サバシアは32歳、バーランダーは29歳、リンスカムは28歳。黒田投手は来年2月に38歳になりますが、16人の中で30代後半のピッチャーは、39歳のデレク・ロウ(ヤンキース)しかいません。そういう意味でも、単年契約とはいえ黒田投手のようなベテランに1500万ドルの値が付けられたのは、改めてすごいことだと思います。今オフのFA選手の中でも、抜きん出た評価ではないでしょうか。

 ではなぜ、黒田投手はそれだけ高く評価されたのでしょう。今シーズン、黒田投手は自己最多の16勝を挙げ、2年連続200イニング以上を投げ、そして地区優勝に貢献したのは数多く報じられています。しかし、何と言っても一番評価されるべきは、セイバーメトリクスによる選手の総合評価指標で、『WAR(※)』の値がア・リーグの投手で5位の『5.2』をマークしたことではないでしょうか。2年連続で奪三振王に輝いたバーランダー、今年のサイ・ヤング賞を受賞したタンパベイ・レイズのデビッド・プライス、今季18勝を挙げたテキサス・レンジャーズのマット・ハリソン、そしてシカゴ・ホワイトソックスの新鋭クリス・セールに次ぐ5番目の数字です。

※WAR=各ポジションの平均選手と比べ、その選手がどのぐらいチームの勝利数を上積みしたかという指標。平均的な選手は『WAR=2.0』

 しかも、これだけの高い成績を名門ヤンキースで残したことも、黒田投手の価値をさらに高めたことでしょう。ヤンキースというチームは、全30球団の中で「最も実力を発揮しにくい球団」と言われています。どのチームと比べても、地元ニューヨークのファンやメディアのプレッシャーはすさまじいものですから。ヤンキースが真っ先に再契約を望んだのも納得です。契約後には、ライバルのボストン・レッドソックスが1800万ドル(約14億8000万円)のオファーを提示していたとも報じられました。1000万ドルでもエースに値する現在のメジャーリーグで、1500万ドルはさらにワンランク上のレベルです。今回の再契約によって、黒田投手は押しも押されぬ日本人随一の『超一流メジャーリーガー』であることを証明したと言えるでしょう。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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