【MLB】2012年を振り返る・後編。45年ぶりの「三冠王」を生んだ電撃移籍 (4ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

1位 パブロ・サンドバル、ワールドシリーズ3連発

 やはり最後は、この話題を挙げなければならないでしょう。『カンフーパンダ』の愛称で親しまれているジャイアンツのパブロ・サンドバルが、ワールドシリーズ第1戦でベーブ・ルース(1926年、1928年/当時ヤンキース)、レジー・ジャクソン(1977年/当時ヤンキース)、アルバート・プホルス(2011年/当時セントルイス・カージナルス)に次ぐ、史上4人目となる『ワールドシリーズ3連発』を成し遂げました。

 この記録がさらにすごいのは、メジャー有数の「投手有利な球場」で知られる、ジャイアンツの本拠地AT&Tパークで達成したという点です。AT&Tパークは2000年4月にオープンしたのですが、この球場で1試合3本塁打を記録したのは、たったひとりしかいません。しかもそれは、2000年4月11日のAT&Tパークのこけら落し。ロサンゼルス・ドジャースのケビン・エルスターという選手が記録しました。それから12年、AT&Tパークでは誰も1試合3ホーマーを成し遂げていなかったのです。

 しかも今年のジャイアンツは、ホームで放ったチーム本塁打数が、81試合でわずか31本。2試合に1本も打っていないのです。またサンドバル自身も、今年のレギュラーシーズンはホーム、ロード合わせて12本しかホームランを打っていません。それがプレイオフに入ると、サンドバルはワールドシリーズ3連発を含め、ポストシーズンで計6本塁打をマーク。まさかの『大バケ』を見せたのです。

 また、3連発のうち2発を、あのジャスティン・バーランダー(タイガース)から打ったということも注目すべき点でしょう。特に初回の1発目は、ノーボール・ツーストライクのカウントだったのです。この『0-2』のカウントからバーランダーがホームランを打たれたのは、なんと過去4回しかありません。絶対的な自信を持って投げた球だったと思うので、このホームランは本人も相当ショックだったのではないでしょうか。

 シーズンを締めくくる最高の大舞台で、まさかの3連発。これはあまりにも衝撃的でした。ジャイアンツがワールドチャンピオンに輝いた2012年の『忘れてはいけない』十大ニュースの栄えある第1位に、ふさわしい出来事だと思います。


※前編はコチラ

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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