【MLB】2012年を振り返る・後編。45年ぶりの「三冠王」を生んだ電撃移籍 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

3位 3度の完全試合と1試合4ホーマー、大偉業が続出

 4月21日にシカゴ・ホワイトソックスのフィリップ・ハンバー、6月13日にサンフランシスコ・ジャイアンツのマット・ケイン、そして8月15日にシアトル・マリナーズのフェリックス・ヘルナンデスと、今年だけで3回も完全試合が達成されました。これはメジャー史上初めてのこと。完全試合を達成した選手は、計23人となりました。また、今年のノーヒットノーランは、完全試合も含めると計7回あり、1900年以降の近代野球ではメジャータイ記録となります。

 一方、バッティングでも、すごい記録が生まれました。5月8日、テキサス・レンジャーズの主砲ジョシュ・ハミルトンが、1試合4本塁打をマークしたのです。これは2003年のカルロス・デルガド(当時トロント・ブルージェイズ)以来、史上16人目の快挙。ピッチャーにとって最高の夢である『完全試合』と、バッターにとって奇跡の『1試合4本塁打』、ふたつの大偉業が同じシーズンに見られるなんて、2012年は最高にエキサイティングなシーズンだったと思います。

2位 プリンス・フィルダー、タイガースに移籍

 ミゲル・カブレラの『45年ぶり三冠王』を十大ニュースで触れる上で、最も欠かせない出来事は、『プリンス・フィルダーのタイガース移籍』ではないでしょうか。意外かもしれませんが、まさかタイガースがフィルダーと契約するとは思ってもいませんでした。

 当初、タイガースはフィルダーの獲得に無関心だったのです。ところが今年1月、指名打者のビクター・マルティネスが練習中にひざを負傷し、今シーズン絶望と判明。するとタイガースは、わずか1週間でフィルダーとの契約をまとめたのです。その内容も、9年総額2億1400万ドル(約161億円)という、メジャー史上4位の大型契約。そんな急転直下の出来事に、誰もが驚いたのでした。

 しかも同じ一塁のポジションには、主砲のミゲル・カブレラがいました。ふたりは体型も似ていて、守備よりも打撃でチームに貢献する同じタイプ。よってフィルダーの獲得には、批判的な声が多く集まりました。ところが、カブレラを三塁にコンバートして開幕してみると、最強の3番・4番コンビが誕生。そして、カブレラは三冠王へと突き進んで行ったのです。

 カブレラの話題で隠れがちですが、今シーズンのフィルダーの活躍には目を見張るものがあります。今年も全162試合に出場し、ミルウォーキー・ブルワーズ時代の2010年9月14日から現役最長となる343試合連続出場を果たしています。しかも、ア・リーグ2位の出塁率.412、同5位の108打点、同7位の長打率.528と、軒並み好成績をマーク。4番にフィルダーがいたからこそ、3番のカブレラが45年ぶりの三冠王に輝いたといっても過言ではありません。まさに『最強の援護砲』です。2012年のフィルダーの電撃移籍も、忘れてはいけないトピックスだと思います。

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