【MLB】今季大ブレイク。ニュースターがタイトル奪取なるか? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

チェイス・ヘッドリー
(サンディエゴ・パドレス/三塁手)

 そしてもうひとり、日本で知られていない意外な選手がタイトル争いに食い込んでいます。それが、サンディエゴ・パドレスのチェイス・ヘッドリーという選手です。

 ヘッドリーがメジャー5年間で最も活躍した年は、2009年の12本塁打・64打点。数字を見ても分かるとおり、並の選手だったのです。ところが今年、突如の大ブレイク。3番バッターとしてチームトップの29本塁打を放ち、さらに昨年ナ・リーグMVPのライアン・ブラウン(ブルワーズ)に1点差と迫る、リーグ2位の109打点を記録しているのです。

 しかも驚きなのが、パドレスの本拠地ペトコパークは、ホームランの出にくい投手有利の球場という点です。チームもメジャー30球団中25位の得点数。そんな「貧打のチーム」での109打点は、実に素晴らしいと思います。なにしろ、チーム全体の5分の1の打点を、ひとりで叩き出しているのですから。

 今シーズンのパドレスは優勝争いの圏外だったので、7月末のトレード期限前にはニューヨーク・ヤンキースをはじめ、ロサンゼルス・ドジャースやボルチモア・オリオールズ、アトランタ・ブレーブスなど、強豪チームがこぞってヘッドリー獲得に動き、大変な騒ぎになっていました。しかし、パドレスはそれらのオファーをすべて拒否。新たなスター選手を手放さなかったのです。

 しかも面白いのが、今年のヘッドリーは打撃面だけでなく、守備面でも大バケしたことでしょう。三塁手としての捕殺数や刺殺数は、リーグトップクラスの数字を記録。さらにほぼ全試合に出場しており、欠場も1試合のみです。28歳にして、まさかの開花――。まさしく『遅咲きのヒーロー』と言えるでしょう。

 スター選手が名を連ねるタイトル争いに、突如割り込んできた彼ら意外な選手たち。果たして初の栄光を手にすることができるのか。ア・リーグの『三冠王』とともに、ナ・リーグの『ブレイク選手』からも目が離せません。


※成績は9月27日時点

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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