【MLB】全米中で話題騒然。ミゲル・カブレラ、三冠王なるか? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 なんと言っても驚きなのは、強打者の揃っているア・リーグで『三冠王』という金字塔を立てようとしている点です。今年はナ・リーグから「3冠王に最も近い男」と称されるアルバート・プホルスがナ・リーグのセントルイス・カージナルスからロサンゼルス・エンゼルスに、そして『史上初の親子本塁打王』に輝いたプリンス・フィルダー(タイガース)もミルウォーキー・ブルワーズからア・リーグへと移籍してきました。そんな屈強のライバルのなかで3冠部門のトップに躍り出るという事実が、いかにすごいことか。本当に信じられません。

 また、今シーズンのカブレラの成績を見てみると、すべての部門で驚異的な数字を残しているのです。9月20日時点の成績をもとに、そのままのペースで最終戦までいくと計算すると、打率.333・44本塁打・142打点・208安打となります。これは、なんと1937年のジョー・ディマジオ(ニューヨーク・ヤンキース)以来最高の成績なのです。現在、タイガースは中地区1位タイでシカゴ・ホワイトソックスと争っていますが、もし地区優勝できなくても、MVPに輝くのではないでしょうか。

 ただ、その一方で、「チームへの貢献度も含めると、この選手のほうが上」という声も挙がっています。それがエンゼルスの新人、マイク・トラウトです。

 今年のエンゼルスは、開幕20試合で6勝14敗という最悪のスタートを切りました。しかし4月28日、20歳(当時)のトラウトがマイナーから昇格して1番センターに定着するやいなや、チームの快進撃の立役者となったのです。トラウトが昇格してから前半戦までのチーム成績は、メジャートップの42勝24敗。エンゼルスはそれまでの借金を一気に返し、一躍、優勝争いに絡むことになりました。

 現在、トラウトの成績は、打率.324(3位)・28本塁打・78打点・47盗塁(1位)。俊足巧打の活躍は非の打ちどころがないのですが、その中でも強調したいデータが、『WRA』という値です。これは、セイバーメトリクスによる野球選手の総合評価を示すものですが、簡単に説明すると、「各ポジションの平均選手と比べ、その選手がどのぐらいチームの勝利数を上積みしたか」という指標なのです。

 平均的なレギュラー野手は、『WRA=2.0』と言われています。しかし今シーズンのトラウトの値は、なんと『10.4』。リーグ2位のミゲル・カブレラが『6.7』なので、トラウトの数値は、まさに断トツです。過去、野手でそれに相当する数値を記録したのは、14人しかいません。そのうち、13人が殿堂入りしています(唯一、殿堂入りしていないのがバリー・ボンズ)。近年で10以上を記録したセンターは、1964年のウィリー・メイズ(当時サンフランシスコ・ジャイアンツ)です。この数値こそチームへの貢献度を示すものなので、トラウトをMVPに推す声が非常に多いのも頷(うなず)けます。

 もし、トラウトがMVPを受賞すれば、新人王は確実なので、1975年のフレッド・リン(当時レッドソックス)、2001年のイチロー選手(当時シアトル・マリナーズ)に次ぐ、史上3人目の『新人王&MVPのダブル受賞』となります。MVPを獲るのはカブレラか、トラウトか――。現地アメリカでは、意見が真っ二つに割れています。

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