【MLB】ヤンキースを牽引するベテラン、イチローとジーターの距離

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by AP/AFLO

 そのジーターに対し、イチローがえらく感心したことがあった。それが200安打達成後のジーターの振る舞いだった。

「200本目のヒットのボールをピックアップしないっていうのはすごいなと。僕はそのこと(200安打)を特別だと思っているし、ヒットを打つ選手として200安打を達成した時のボールは、普通欲しいよね。結局、ジーターは取らなかったからね。考えられない。ホント、そういうところでジーターという選手の凄味を感じますね」

 正直、そんなところをよく見ていたなと思ったが、自身の言葉通り、200安打にこだわりがあるからこその観察力といえるのかもしれない。その上で、イチローの言葉からジーターの選手としての資質の高さを感じとることができる。

 そしてジーターは、偉大なる"鉄人"ゲーリッグに並んだ自身の記録について、クールに語った。

「チームの勝利のために毎日安定したプレイをしてこそチャンスがある。自分自身でも誇りに思えることだ」

 その直後、今度はジーターが「今日のヒーローはイチローだ」と言わんばかりに、イチローを称え出したのだ。

「1日7安打なんてやったことがないよ。本当に難しい。8打数無安打ならば、やったことがあるけどね(笑)」

 ジーターは今年38歳。年齢ではイチローが1つ上だが、いわば同世代。昨年までの実績も、ジーターがメジャー17年間で3088安打ならば、イチローは11年間で2428安打(日本時代を含めれば20年で3706安打)。この日米を代表する希代のヒットメーカーであるふたりが、いまヤンキースを牽引している。その姿は見ていて本当に楽しいし、またふたりが語るコメントも実に秀逸である。

 イチローにとって優勝争いに身を置きプレイすることは、自らが熱望し続けてきたこと。もちろん、未経験であるワールドシリーズへの出場は最大の目標である。一方、ジーターの目標は、言うまでもなく28回目のワールドチャンピオンだ。オリオールズとの地区優勝争いは熾烈を極めているが、ふたり揃って最高峰の戦いへ進めるチャンスはそうはない。日米ふたりのヒットメーカーの競演。ヤンキースの熱い戦いはまだまだ続く。

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